アメリカ大統領選ウォッチ14

ヒラリーはバーニー支持者をとりこめるのか?

日本に行っていたので1ヶ月以上も間があいてしまいました。その間に共和党はトランプが大統領候補に決定。今週は民主党もヒラリーが予備選挙最後の大票田カリフォルニアを制して勝利を決めました。が、トランプは相変わらずトンデモ発言を続け、バーニーは相変わらず党大会まで戦い続ける姿勢をくずさず(理論的には党大会でデリゲートによる投票が行われるまで正式決定ではない)、両党とも落しどころがまだ見つかっていません。

ことに共和党はトランプの勝利が動かせないものとなってから、ますますの迷走を続けています。クルーズとケーシックが予備選挙を離脱した時点で、トランプが事実上の共和党の大統領候補となったわけですが、共和党幹部からは「トランプは支持しない」という声が続出。ジョージ・ブッシュ、ジェブ・ブッシュ、ジョン・ケーシック、ミット・ロムニーは党大会への不参加宣言。しかし、今となっては打つ手はなく、トランプは順調に勝利に必要なデリゲート数1237をクリア。ここにいたって、とうとう観念したのか、不支持または支持保留といっていた党幹部が、今月になって次々とトランプ支持を宣言しだしました。

なかでも世間を驚かせたのが、現在の共和党のリーダーにあたる下院議長のポール・ライアンのトランプ支持宣言です。

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ポール・ライアンは共和党の若手ホープといわれていますが、この人はついてません。去年ジョン・ベイナーの後をついで下院議長に押し上げられた時点で既にババをつかまされた感がいっぱいだったのですが、今や共和党で最も苦しい立場に立たされています。そのポール・ライアンが何やらトランプと密談した後で「トランプは共和党のアジェンダの法律化に協力してくれるはずだ」と言ってトランプ支持を宣言したのです。

が、一方のトランプは、そんなことはおかいまいなく、またもや人種差別発言でメディアをにぎわすことになりました。トランプのビジネスの一つにトランプ・ユニバーシティという名称からすでにあやしげなビジネスがあるのですが、そのビジネスが詐欺だと訴えられていたのです。現在その訴訟の最中ですが、トランプは裁判官、Gonzalo Curielが気に入らなかった。「俺は反メキシコだと思われているのでメキシコ人の裁判官にはフェアな裁判はできない」と言い出したのです。
ちなみにこの裁判官はインディアナ州生まれのメキシコ系アメリカ人です。メキシコ人ではありません。

この発言にあわてたのが、トランプ支持を宣言したばかりの共和党幹部の面々です。不適切発言についてメディアに問い詰められ火消しにおおわらわとなりました。が、当の本人は「俺はほんとのことを言ってるだけだ」と火に油を注ぎまくっています。ポール・ライアンとの間でどういう話し合いがあったのかはわかりませんが、トランプがトランプでなくなることは有り得ないというのが早くも明らかになりました。

これは人種差別発言ではないのか、というメディアの追求に、最初は「不適切であるがゴニョゴニョ」と口を濁していた共和党幹部も、収拾が付かないとみて人種差別発言である事を認めはじめました。そして、これを機にトランプ不支持を明言する共和党議員も現れだしました。
ポール・ライアンやミッチ・マコーネル(上院の共和党リーダー)のような共和党役員はトランプがどんなにろくでもないことをしようと、立場上トランプ不支持を宣言するわけにはいきません。人種差別発言をするような候補者を大統領候補として支持できるのか、という記者の質問への答えは「クリントンに勝たせるわけにはいかない」です。つまり、積極的にはおすすめできない候補というわけです。

今、共和党の政治家はみな、トランプ支持にまわるリスクか、不支持にまわるリスクかどっちをとるかをせまられています。まだまだ11月の大統領選挙までは一波乱も二波乱もありそうです。

一方の民主党は、ヒラリーが勝利に必要なデリゲート数を固め、民主党候補となりました。初の女性大統領候補という華々しい見出しが出ても、なんだか世間は冷めています。ヒラリー支持者とバーニー支持者の溝は一向にうまる気配はなく、民主党も本選挙にむけての一本化ができずにいます。本選でトランプに勝つためにはバーニーの支持者を取り込むことが必須です。この先の国会議員選挙を考えても、ここでバーニー支持の若年層が離れていくのはなんとしても避けたい。が、もともと反エスタブリッシュメントのムーブメントとして支持を伸ばしてきたバーニー陣営の民主党本部との確執は選挙戦を通じてさらに深くなっています。

それが一気に噴出したのが5月のネバダ民主党州大会です。ネバダ州の予備選挙は2月にヒラリーが勝利しているのですが、ネバダ州のデリゲートの配分の仕方は複雑で、最終的なデリゲート獲得数は州の党大会で決定されます。この州党大会を運営したネバダ州民主党代表のロバータ・ランゲのやり方が不公平だとして、バーニー支持者が大暴れ。ランゲに脅迫メールが送られる騒ぎになりました。実際に不公平であったのかどうかは賛否両論があるところなのですが、実はバーニー支持者の不満はこれに始まったことではありません。民主党執行部が何事もクリントンに有利なように運んでいるということは予備選挙が始まったころから指摘されていました。

たとえば、討論会の日時は常にフットボールの放送時間の裏など、視聴率が低い時間帯に設定されていました。これは、既に政治的知名度のあるエスタブリッシュメントサイドの候補、つまりヒラリーに有利になるやり方です。こうした民主党執行部のさりげないヒラリー援護をしていた中心人物とされるのが民主党委員長のデビー・ワッサーマン・シュルツです。

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そのデビー・ワッサーマン・シュルツがネバダ州の騒ぎに関してバーニーとその支持者を非難しました。バーニー支持者もだまってはいません。バーニー以前からリベラル派には評判の悪かった人だけに、公平であるべき立場にありながら職務を果たしていない、と一気に民主党の悪役となり、委員長おろしのキャンペーンまで始まりました。デビー・ワッサーマン・シュルツはスケープゴートにされただけだという意見もあります。が、この人がヒラリーのガールズクラブのメンバーであることは間違いありません。そして、おそらくネバダ州のロバータ・ランゲも。

かつて、職場に進出した女たちは権力をにぎる男たちの非公式なネットワークをボーイズクラブといって非難していました。おそらくボーイズクラブは今も健在ですが、男女平等が実現してめでたくガールズクラブもできたわけです。デビー・ワッサーマン・シュルツも「女どうしは助け合うのが当然だ」と説教をたれたオルブライトも、外から見ればガールズクラブだってボーイズクラブと同じくらいアグリーに見えることに気付いていないのです。初の女性大統領候補という謳い文句がどこか釈然としないのも、女性を含めた多くの人々にとって、それがもう一つのエスタブリッシュメントにしか見えないからです。

さて、敗北がほぼ決定したバーニーですが、相変わらず選挙戦を退く気はなく、断固として党大会まで持ち込む姿勢を貫いています。通常の予備選挙なら負けが見えた時点で降りるのですが、逆転勝利は考えられない状態でバーニーが何を望んでいるのか、またヒラリーと民主党がバーニーに何をオファーするのかが注目の的となっています。74歳という年齢からいってバーニーに次はありません。そして副大統領ということも考えがたい。しかし、なんらかの形でバーニーの政治主張をとりいれないとバーニー支持者は納得しない。バーニー支持者にそっぽを向かれては本選挙が危ない。

まず民主党執行部がオファーしたのは党の基本方針を決めるプラットフォームコミッティ(基本方針委員会)のメンバーの指名権です。規定では民主党委員長(デビー・ワッサーマン・シュルツ)が15人の委員全員を指名できるのですが、デリゲートの獲得比率に応じてヒラリーが6人、バーニーが5人、シュルツが4人という異例の形になりました。これによって、バーニーの主張も民主党の基本方針に反映されるというわけです。民主党から見ればかなりの譲歩だと思いますが、これによってもバーニーを撤退させることはできませんでした。果たしてバーニーはどこまで民主党をプッシュできるのか、民主党は党大会後にバーニーをどう扱うのか。当面はそれが民主党の注目ポイントです。
実は、ここに来てもう一人注目を集めている民主党の政治家がいます。民主党女性議員の中で唯一ヒラリー支持を表明していなかった上院議員のエリザベス・ウォーレンです。

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この人は民主党の急進派として人気のある政治家で、リベラルな政治家としては去年まではバーニーより有名でした。そのエリザベス・ウォーレンが今週ヒラリー支持を表明したのです。そして民主党のさまざまなイベントでトランプ攻撃のスピーチを展開し始めました。

このスピーチもなかなか面白いのですが、ひょっとしてヒラリーの副大統領候補になるのでは、ということでも注目されています。そうです。女の大統領に女の副大統領。エリザベス・ウォーレンはバーニーの支持者にも人気がある。女、女は有り得まい、と普通なら考えますが、だからこそプログレッシブなイメージをアピールできる。一応、筋は通っています。

大統領候補が決まった今、とりあえず次の注目は副大統領選びです。

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アメリカ大統領選ウォッチ13

ニューヨーク予備選挙の特殊事情

さて、大票田として注目されたニューヨーク州予備選挙の結果は、予想通りトランプとヒラリーの勝利に終わりました。これだけ聞くと、まるでニューヨークではトランプとヒラリーに人気があるように見えますが、実はこの予備選挙結果は、さほどニューヨーク州民全体の意識を反映しているわけではないのです。特に共和党に関しては、これはニューヨーク州民の総体的な意識を表す結果ではありません。実はニューヨークにはトランプ支持者はほとんどいないのです。それなのになぜトランプが大勝したかというと、それはニューヨークの選挙事情にわけがあります。

予備選挙というのは国政選挙ではなく、プライベートな組織である各党の代表を決める手続きですから、国民全員に投票権があるわけではありません。州法によって選挙権があれば誰でも投票できるオープン方式の州と、党員として登録している人だけに投票権があるクローズド方式の州がありますが、ニューヨークの場合は、全米でも最も厳格なクローズド方式です。

ニューヨーク州全体には有権者が1,200万人弱いるのですが、そのうち民主党に登録しているのは580万人弱、共和党に登録しているのは270万人強です。残りの30%くらいの人々はインディペンデントと呼ばれる無党派で(弱小政党の支持者も若干いる)、予備選挙には参加できません。ニューヨーク市に限るとさらに極端で、450万人弱の有権者のうち、民主党員は300万人強、共和党員は46万人、つまり共和党の予備選挙に参加できるのはニューヨーク市民の約1割です。

民主党磐石のニューヨーク州の共和党員というのは、そもそもが少数派であって、ニューヨーク市内に限っていえば異端といってもいいような存在です。しかもその少数派の中でもマンハッタンのトランプタワーのある選挙区に限って言えば、トランプはケーシックに負けています。ですから、トランプが州の予備選挙で60%を獲得したといっても、マンハッタンでランダムに街頭インタビューをしたら、トランプを支持する人にはめったにお目にかかれないということになります。

ちなみにニューヨークに限らず、アメリカでは成人年齢に達したり、引越したりしたときには、居住地区で投票人登録をしないと投票はできません。その投票人登録フォームには支持政党を書き込む欄があります。そこに支持政党を書き込むとその党のメンバーとして登録されたことになります。とても簡単です。特に支持政党を決めていない場合はno partyと書けば、いわゆるインディペンデントになります。支持政党の変更も可能です。が、支持政党の変更にはno partyからの変更も含めて投票するための締切期限があります。州によっては予備選挙当日の変更も可なのですが、ニューヨークの場合はその締切が全米一、それも飛びぬけて早いのです。

今回の予備選挙の場合、締切は去年の10月9日でした。つまりニューヨーク州のインディペンデントは半年以上前に投票したい政党(民主党または共和党)に登録変更をしていないと投票できなかったということです。去年の10月といえば、まだ予備選挙の始まる前、最初の討論会さえ開催される前です。その頃はトランプやバーニーがここまで支持を集めるとは誰も夢にも思っていなかったし、こうした熱い長期戦は予想されていませんでした。過去の例では、ニューヨーク予備選挙の時期には両党の候補はほぼ決定していたのです。つまり、ニューヨークの予備選挙というのは、これまで投票したってしなくたってどうでもいいのがデフォルトだったのです。その結果、ニューヨーク州で予備選挙に参加するのは、民主党あるいは共和党のコアな支持者のみ。半年も前にはりきってどちらかの政党に登録変更をするインディペンデントは多くはないし、そもそも規則そのものがあまり知られていませんでした。今回の予備選挙ではトランプの成人した子ども2人も、この締切を知らずに登録が間に合わず、投票できなかったのです。

一方、インディペンデントに圧倒的に強いといわれるのがトランプとバーニーです。つまり、ニューヨーク州はその点で、トランプとバーニーには不利な州ということになります。バーニーがニューヨーク州内の集会では大変な人気を集めていながら思ったほど票を伸ばすことができなかったのは、このニューヨーク州の厳格なクローズド方式が大きく影響しています。

それでは、この不利な条件にも関わらず大勝したトランプはよほど人気があったのか?ということになりますが、トランプのニューヨークでの勝因はまったく別のところにあります。それは、後を追うテッド・クルーズがニューヨークで徹底的に嫌われていることです。

クルーズはニューヨーク州の大負けで自力での過半数獲得は計算上不可能となりました。しかし、3位のケーシックを大きく引き離して2番手につけていて、トランプに次いで共和党候補になる可能性が高いはずです。が、日本ではほとんど知られていません。存在のアクの強さではトランプにもおとらないクルーズについて、ここでちょっと簡単に説明しましょう。

まずバリバリの極右保守です。中絶はレイプでも何でも反対。同姓婚は有り得ない。リバタリアンでもあり(リバタリアンの本家みたいなロン・ポールに言わせるとクルーズなんかほんとのリバタリアンじゃないそうですが)、国税局廃止を訴えています。もちろん健康保険のオバマケアは大反対(これは共和党候補全員がそうですが)。テッド・クルーズを一躍有名にしたのは2013年に予算を通過させずにオバマケアを阻むために国会で行った21時間スピーチです。時間切れにもちこむためにダラダラと21時間ノンストップのスピーチをして国会を機能不全にしました。そしてこれも共和党は全員がそうですが、地球温暖化は認めない(そんなもんはリベラルが造り上げたでっちあげだ)ことでも急先鋒です。

もともとティーパーティの支持を得て政界に出て来たのですが、本人はプリンストンからハーバードロースクールを出たエリート。さらに妻はゴールドマンサックスの大金持ちの投資担当部門の重役(現在休職中)という、貧乏人の味方では有り得ないところも胡散臭い。

また、中絶と並んで共和党と民主党を二分する社会問題である銃規制反対でも最右翼。「悪いやつを止めるには正義側が銃をもつことである」という持論で全米ライフル協会からA+をもらう政治家です。

ちょっと話はそれますが、この銃規制に関する共和党の姿勢というのはちょっと頭を抱えたくなるものがあります。胎児の命を守るのにはやけに熱心な共和党ですが、生まれた後の人を殺すことにかけては、まことに鷹揚、ほとんど全米ライフル協会のいいなりです。アメリカの国会でマジョリティを確保している共和党があらゆる銃規制に問答無用で絶対反対なので、これだけ銃による犯罪がありながら一向に銃規制が進みません。銃購入のためのバックグラウンドチェックを厳しくしようというだけでも、Second Amendment(憲法修正第二条)で保証されている自己防衛の権利が危ういと大騒します。銃販売のプロセスにテロリスト容疑者リストのチェックを加えるという法案すら「もしたまたま同姓同名の人がいて、間違われたら銃が買えなくなるから反対」(byマルコ・ルビオ)というテロの心配より事務処理ミスの心配か、という屁理屈をこねくりまわして反対。「ユダヤ人が銃をもっていたらホロコーストは防げた」(byベン・カーソン)とか、お前バカじゃないのか、と思われるようなことまで堂々と言ってしまいます。

さて、ここでまたクルーズの話に戻りますが、リベラル磐石のニューヨーク州は全米でも珍しく厳しい銃規制をもつ州です。当然クルーズの銃擁護理論は嫌われます。同姓婚や中絶問題といったほかの社会問題に関しても、いくら共和党でもニューヨークではクルーズの超保守思想は受けません。
そして、何よりも決定的だったのはサウスカロライナでの討論会でトランプを攻撃するのに「同性婚や中絶をサポートしてお金とメディアに執着するニューヨークの価値観」として、「ニューヨーク価値観」批判をしたことです。これがニューヨーカーの間で大炎上。選挙運動中も行く先々でボイコットにあうことになりました。

ニューヨークのタブロイド紙、デイリーニュースにもこんな表紙が。


さて、ニューヨークで超不人気のクルーズにかわって2位につけ、小数ながらデリゲートも増やしたのがケーシックです。このケーシックはトランプやクルーズに比べれば、オーセンティックな政治家であるとして、常識派共和党支持者の票を集めているのですが、実はこの人もまた結構なとんでもぶりを発揮していることがわかってきました。これまで報道されてこなかったのは注目されていなかったからだったのです。

そのとんでもぶりはトランプやクルーズとはちょっと違います。先週話題になっていたのはケーシックの「tone deafness」。そのまま訳せば音痴ですが、つまり「空気読めない」というやつです。その失言、そして失言であることが理解できていないぶりは自民党の政治家を思わせるものがあり、これでは政治家の資質として問題ありすぎです。なるほど、共和党エスタブリッシュメントが候補としてまともにとってなかったわけが納得できます。
(このクリップの10分目くらいからです)

ラテン系を持ち上げるているつもりで、宿泊したホテルのヒスパニックのメイドがどんなに素晴らしかったかをとうとうと述べる。女性からのサポートに感謝するつもりで「私が当選できたのも、たくさんの女性がキッチンから出てきてサポートしてくれたからです」。冗談のつもりで女性支持者に向かって「あなたはダイエットしたことある?あるよね、何回も」。自分の世代での社会保障について質問した女子高校生に向かって「16歳なのに、年金の心配?誰かにいわれて質問してるの?」そして極めつけが、性的暴力の防止対策についてどう考えているか、という女子大生の質問に対して長々と答えた最後に「一つアドバイスをしよう。お酒のからむパーティには行かないことだ」。まあ、ほかにもいろいろ。このビデオクリップは面白いのでぜひご覧ください。ちなみにこれがなんでいけないの?と疑問に思った方は政治的「tone deafness」です。

おそらく、どういう展開になってもケーシックが候補になることは有り得ないと思われます。

アメリカ大統領選ウォッチ12

アンバウンドデリゲートってなんだ?

大統領予備選挙もいよいよ大詰めにさしかかりました。1月から、その時々で話題になっているトピックを取り上げてきたのですが、ふりかえってみるとこの3ヶ月で選挙戦をめぐるアメリカ全体の空気がずいぶん変わってきています。この大統領選ウォッチの第1回のタイトルは「アメリカは社会主義アレルギーを克服できるか?」でしたが、バーニーが善戦を重ねている今見れば間抜けなタイトルで、実は社会主義アレルギーなんて、政治家やメディアの思い込みの中だけに残っていたものだったのです。ほかにも、絶大なはずと思い込んでいたエスタブリッシュメントの力がそうでもなかったとか、ポリティカリーコレクトネスは政治家の命じゃなかったとか、予備選挙って実は全然民主的なシステムじゃなかったとか、常識と思い込んでいたことが、バンバンくつがえってきました。民主党の予備選挙の空気でいつのまにか大きく変わったのは総選挙での予想です。

1月の時点では、社会主義者でユダヤ人のバーニーは総選挙で共和党に負けてしまうのでは、という心配がバーニー支持者の間にもあり、ヒラリーの一番の売りは総選挙で勝てそうなこと、と思われていました。が、今やこれはすっかり逆転しています。数ある調査のほとんどすべてで共和党のどの候補に対してもバーニーは優勢で、その差はヒラリーを上回っています。さらに、ヒラリーはトランプにこそ勝てる予想が出ているものの、クルーズでは調査によりけり、対ケーシックではさらにそれが危ないと予想されています。今では逆に、「ヒラリーが勝ちそうだけど、はたしてヒラリーは総選挙で共和党に勝てるのか」という危惧が民主党支持者の間には生まれています。

直近の予備選挙で6連勝しているバーニーですが、獲得デリゲート数の差はあまり縮まっていません。民主党の場合、共和党のような勝者総取り州はないので、デリゲート数の多い州で大勝しないかぎり目立った追い込みはできないのです。そしてもちろん、デリゲートのうち15%近くを占めるスーパーデリゲート(予備選挙と関係なくデリゲートとしての投票権をもつ民主党幹部)がほぼヒラリー総取りという状況も揺らいでいません。そこで291人のデリゲートをかけた火曜日のニューヨーク州の予備選挙が注目されているわけですが、それも予想ではヒラリーが大幅にリード。ニューヨーク州の場合はその場で投票登録できるオープンプライマリーではなく、既に登録済みの党員のみが投票できるクローズドプライマリーなので、支持基盤が若者であるバーニーには不利です。また、ニューヨーク市周辺こそリベラルですが、アップステートには広大な保守エリアがあり、地元上院議員として長年選挙運動を展開してきたヒラリーに有利に展開するといわれています。バーニーのニューヨークでの集会は、オバマの記録を破る人数の聴衆を動員し、一見ヒラリーよりはるかに人気があるように見えますが、その人気ほどには予備選挙のバーニー票は伸びないものと思われます。つまり、ヒラリー勝利の可能性はますます高く、本選挙への心配もますます大きいというわけです。

一方の共和党ですが、もはや状況はトランプに過半数を取らせないための共和党対トランプの戦いと化しています。トランプが予備選挙で過半数にあたる1,237のデリゲートを獲得すれば、共和党候補はトランプとなります。が、トランプのトップの座はゆるがないものの、過半数の1,237をとるのは難しいと予想されています。

獲得デリゲートが過半数に達する候補がいない場合は、7月の党大会(コンベンション)で決戦投票が行われることになります。決戦投票では誰かが過半数をとるまで繰り返し投票が行われます。これがコンテスティド・コンベンション(contested convention)です。同じメンバーで何度投票したって結果は同じだろうと思うかもしれませんが、これが違うのです。デリゲートというのはプライマリーやコーカスで選ばれた各州の代表であり、どの候補に投票するかは予備選挙の結果により予め決められているのですが、だいたい2回目または3回目の投票から誰に投票してもよくなるのです(何回目から自由に投票できるかは州によって異なります)。

そこで、大きくクローズアップされてくるのが、デリゲートって何者?ってことです。これまで、デリゲートなんてプライマリーやコーカスといった予備選挙で決まった候補に投票しに行くだけの伝書鳩みたいな存在だと思われていたのですが、実はそうではなかったのです。いったんコンテスティド・コンベンションになると、党の候補選びは予備選挙の結果に関わりなく、デリゲートの意思ひとつにかかってきます。この肝心のデリゲート選定には州によってまったく異なるルールがあり、しかもそのルールは複雑です。だいたいにおいて投票者とは関係のないところですすめられます。中にはプライマリーで獲得したデリゲートの数だけ決まって、誰を選ぶかは後から決めるシステムになっている州もあります。つまり、トランプに割り当てられたデリゲートがトランプ支持者であるとは限らないのです。

また、さらに複雑なのはアンバウンド(unbound)デリゲートの存在です。民主党にスーパーデリゲートがいるように、共和党にはアンバウンド、つまり最初から投票先に縛られずに好きな候補に投票できるデリゲートが存在します。その有無や数は州によります。たとえば、アンバウンドデリゲートが極端に多いペンシルバニア州では71人のデリゲートのうち54人がアンバウンドデリゲートです。また、共和党には、ノースダコタ、コロラド、ワイオミングといったプライマリーもコーカスもやらずに州の党大会で決めるアンバウンドデリゲートだけを送り込んでくる州もあります。

つまり党大会での決戦投票に備えるには、プライマリーやコーカスで勝つだけでなく、どれだけ本物の自分の支持者をデリゲートにするかということが重要になるのです。それには、各州のルールや共和党内部の事情に精通していることが大切になりますが、そうなるともちろんトランプには不利です。コロラド州党大会では37人のデリゲートのうち34人をクルーズにさらわれました。

さて、このアンバウンド・デリゲートは、今回のような接戦の場合には大きな力をもつことになります。そして、民間人なので政治家のような贈収賄禁止法には縛られていません。なんといっても政党とはプライベートクラブみたいなもので、大統領候補はプライベートクラブの代表を選ぶようなものなのです。党や政府での役職を引き換えとすることは違法とされていますが、金銭相当の授受についての規制はかなりゆるいというか、グレーエリアなんだそうです。党大会開催都市までの豪華な旅行やお食事などは当たり前。ロナルド・レーガンはハリウッドスターに会えます、なんてこともやったらしいです。

これまで、デリゲートなんて誰も注目してこなかったので、さりげなくこうした賄賂まがいのことが普通に行われてきたわけですが、これだけ注目を集めてしまった今回は、トランプだってクルーズだって、あからさまな接待はできません。デリゲートの方だって、誰が何をもらったなんてことをツイートされたら一気に炎上しかねないので、これまでのようにだまって特権を楽しむわけにはいきません。かえって、これまでより正当なやり方で獲得していくしかないものと思われます。

さて、共和党はトランプ以外全員が一丸となって、党大会をコンテスティド・コンベンションにするべく励んでいますが、実は決戦投票にはそれぞれが全く異なる思惑をもっています。2位につけているクルーズはもちろんトランプに代わって候補になる気満々です。大きく引き離されているケーシックだって、決戦投票になれば獲得デリゲート数など関係ないので、党大会では本来正統派である自分にこそチャンスがあると、これもやる気満々です。さらにコンテスティド・コンベンションでは、これまで候補でなかった候補を新たに選ぶこともできます。共和党エスタブリッシュメントが7月の党大会で狙っているのは実はこれだとずっと言われていて、現下院議長のポール・ライアンを出してくるのでは、というのがもっぱらのうわさです。もう何がどうなるものかさっぱり予測がつきません。

また、予備選挙開始時には、自分が負けても、最終的に共和党候補として選ばれた他の候補を支持する(無所属としては出馬しない)ということを全員が宣誓していましたが、その宣誓は既に全員が撤回しています。獲得票数がトップにも関わらず、他の候補が選ばれたらトランプは無所属として出馬する可能性があります。また、トランプが予備選挙で過半数に達して共和党候補となったら、無所属で保守派候補をたてる共和党の一派が出ることも考えられます。実は、このシナリオは民主党にとって何よりの脅威になります。

1月の時点では無所属での出馬を考えていたブルームバーグは3月に不出馬を表明しました。その理由の一つが3候補による選挙戦では誰も過半数をとれない可能性があるから、というものでした。大統領候補が本選挙で誰も過半数をとれなかった場合、アメリカの法律では、決断はコングレス(国会)にゆだねられるのです。そして今、国会のマジョリティは共和党です。

つまりもし3者レースとなった場合、共和党は勝つ必要はないのです。民主党候補(おそらくヒラリー)に過半数をとらせなければ、好きな候補を大統領にできることになります。3人目が誰になるかはわかりませんが、ともかくトランプ+共和党候補であることはまちがいありません。実質的に、民主党候補は2対1のレースを強いられるようなものです。このことについてなぜ誰もあまり言及しないのかわかりませんが、私はこれが一番おそろしいシナリオだと思っています。

アメリカ大統領選ウォッチ11

中絶は共和党の政治の道具

さて、先週土曜日の民主党予備選挙(共和党はなし)、ワシントン州72%、ハワイ州69%、アラスカ81%と、すべてバーニー・サンダース圧勝。予想されていたこととはいえ、事前調査以上の大差に、ヒラリー鉄板という予想がぐらついてきました。次のウィスコンシンもバーニーの勝利が予想されていて、その次の大票田であるニューヨーク州に注目が集まっています。つまり、珍しくもニューヨーク州が予備選挙に重要な役割を果たすことになりそうです。

一方の共和党は、来週のウィスコンシンまで中休み状態ですが、相変わらずそのドタバタぶりでメディアを独占しています。ここ数日物議をかもしているのはまたしてもトランプ。トランプの「違法中絶した女性には罰則を」発言です。MSNBCのインタビューで「ぼくはプロ・ライフ(中絶反対)だ」と言ったことから、インタビュアーのクリス・マシューに「では中絶が違法だとしたら、中絶を受けた女性には罰則が必要か」としつこく理詰めで問い詰められたトランプ。なりゆきで「なんらかの罰則が必要だと思う」と言っちゃったのが、大炎上。メディアや民主党候補はもとより、共和党の対立候補にまで女性の敵として責められることになりました。

このビデオの10分目くらいからです。

これだけ聞くとトンデモ発言みたいですが、実はこれ、素直にロジックに従ったらこうなっちゃった、というむしろプロの政治家でないナイーブさの証明みたいなものです。ここでもトランプはまた新たな共和党のパンドラの箱をあけちゃってるのです。クリス・マシューの質問の仕方も、トランプの意見をきくというよりも、プロ・ライフという共和党の主張そのもののうそ臭さをあばこうとしているようにきこえます。

中絶の是否がこの21世紀に先進国で政治問題になっているということ自体が信じがたいですが、アメリカでは中絶問題は、ここ数十年ずっと政治の道具として使われてきたのです。共和党と民主党できっぱり主張が分かれる社会問題がいくつかあるのですが、中絶もその一つです。民主党は「女性の身体の問題は女性自身が決めることである」というプロ・チョイス、共和党は「胎児は神から授かった命であり、それを殺す中絶は殺人である」というプロ・ライフです。ちなみに現在、アメリカでは州によって制限はありますが、中絶は合法です。つまりそれを制限しようというのがプロ・ライフの主張ということになります。

中絶の違法化っていったいいつの時代の話だよ、と思いますが、アメリカには大変信心深いクリスチャンが一定数いて、他の政策には同意できなくても、この一点だけで共和党に投票するという人もいるのです。そこまで熱心ではなくともカトリックの教義に基づくことを望ましいと思う人は少なくありません。保守層を基盤とする共和党は、こうした超保守層にアピールするために1960年代から中絶には反対の方針を貫いてきました。が、それは女性の権利に反する主張であり、今となっては時代にそぐわないことも確かです。それを厳格に貫いては女性票も中道票も離れていってしまいます。ですから保守層対策としてプロ・ライフを主張しても、具体策についてはできるだけ語らないというのが共和党のポリティカルトークなわけです。

共和党の政治家はプロ・ライフということになっているのですが、もちろん全員が心からプロ・ライフなわけではありません。むしろ今時心から中絶反対の共和党の政治家なんてそうはいないでしょう。そこをついたのがクリス・マシューの質問です。「プロ・ライフってことは中絶をした女性には罰則が科されるってことですか。ぼくはいつもプロ・ライフって理解できないんだけど。法律で違法とするなら、それに対する罰則があってしかるべきでしょう?」

こういう質問の正しいかわし方は、「中絶手術を行うことが違法なので、罰則は医師に適用」です。これなら女性の敵にならずにすむし、中絶を行う医師がプロテストすることもまずありません。こずるい詭弁ですが、ベテランの共和党の政治家なら、そんなことは基本中の基本です。が、トランプはベテラン政治家ではなかった。だいたいトランプの場合、プロ・ライフという立場そのものがいかにも付け焼刃です。大統領候補になるまでは中絶のことなんて頭の片隅にもなかったにちがいありません。

そして、とりあえず共和党候補となった今、自分はプロ・ライフである。プロ・ライフは中絶を違法としようという主張である。違法行為には罰則がなければならない。したがって中絶をした女性には罰則が科されて当然である。という論理展開は実に正しい。インタビューではいかにも進退窮まっているのがわかりますが、論理的に考えるほど「罰則は必要」になってしまうのです。後から発言を撤回して「罰則は中絶を受けた女性にではなく、中絶手術を行った医師に適用」と訂正していましたが、後のまつりです。

さて、これに対して鬼の首をとったようにトランプを女性の敵よばわりした対抗候補のクルーズですが、超保守候補であるクルーズはバリバリのプロ・ライフ。中絶は何が何でも反対。プランド・ペアレントフッド(バースコントロールや中絶に加え、癌予防その他の婦人科系の医療サービス全般を提供している非営利団体)を目のかたきにしています。「胎児だけではなく、その母親も大切にするのが、プロライフだ(だから母親に罰則は言語道断)」って、どの口が言ってんだよ、と思いますが、こういうことをしゃあしゃあと言うところがいかにもクルーズです。

中絶に対する態度には同じ共和党候補でも保守度によって温度差があり、保守中道のケーシックは例外付きの中絶反対ということになっていて、できればその点については話題にしたくないな、という姿勢です。これまでの共和党の大統領候補あるいは大統領は、だいたいこの路線の「一応プロ・ライフ」だったのです。が、中道保守が売りのケーシックも、トランプの失策に黙っているわけはありません。メディアはトランプバッシングの嵐となり、なりゆきで共和党のポリシーに従っただけだったトランプはいつのまにか中絶反対最右翼のようになってしまいました。実際のところは、トランプの対応のまずさが政治家としてどうよ、ということはあっても、中絶問題についてはクルーズのほうがよほどたちが悪いのは明らかです。こう大騒ぎすることもあるまいと思うのですが、今や共和党も民主党もメディアもトランプのネタはどんなことでも徹底的にくいつくことになっています。既に民主党の予備選に勝つことを予想して11月の本選挙に向けてトランプ対策をすすめているヒラリーももちろん即座に攻撃していました。

この点について唯一まともなことを言ったのがバーニー・サンダースです。インタビューでトランプ発言について語っていたのがこんなこと。

この動画の15分目くらいからです。

 

「もちろん中絶を受ける女性に罰則なんて言語道断だ。でも、それは別として、また、こうやってトランプのくだらない発言でメディアが1週間もちきりになることが問題なんだよ。最低賃金とか税金とか地球温暖化とか、ほんとに話さなきゃならないことはまったくメディアに出ないじゃないか。」

ものすごくまっとうな意見です。が、このまっとうな意見にわざわざかみついたヒラリー。
「バーニーは中絶問題をとるにたらないといっているが、中絶問題は女性の権利の重要な問題であって経済問題よりも重要性が劣るなどということはない」 バーニーが筋金入りのプロチョイスであることを知りながら、ポリティカルなロジックをふりまわしたあげあしとり。これだから嫌われんだよ、ヒラリー。バーニーにもまだ望みはあるとはいえ、ヒラリーが勝つ可能性のほうがはるかに高いんですから私たちだってヒラリーを好きになりたい、信用したい。が、ますます好感度が下がっていくヒラリー。本選挙がまじで心配です。

アメリカ大統領選ウォッチ10

がんばれバーニー

火曜日の予備選挙は、共和党がトランプがアリゾナを勝者総取りし、クルーズがユタを取りました。デリゲート数でいうとアリゾナが58人でユタが40人ですから着々と引き離されています。一方の民主党はヒラリーがアリゾナで圧勝しましたが、アイダホとユタはサンダースが圧勝し、獲得デリゲート数でいうとヒラリーが55人、サンダースが73人と、わずかではありますが、その差を縮めました。

この予備選挙日の前日、月曜日に行われたのがAIPAC (American Israel Public Affairs Committee)の集会。AIPACとはプロ・イスラエルのロビーグループで、アメリカの外交政策に最も影響力のあるロビーといわれています。AIPACは共和党よりといわれていますが、建前としてはどちらの党にも肩入れしないということになっています。そのAIPACが年次集会のゲストスピーカーとして各党の大統領候補を全員招待しました。この忙しい予備選挙戦の真っ只中に候補者たちがスピーチをしにくるくらいにAIPACは政治的に影響力をもっていると認識されているのです。そこで、開催前から物議をかもしていたのは今回もトランプ。

ホロコーストという人種差別による甚大な被害を受けてきたユダヤ人の団体として、人種差別発言しまくり候補のトランプをスピーカーとして招くのは不適切である、というわけです。当日はトランプが壇上に上がると黙って会場を去ることで沈黙の抗議をするAIPACメンバーもいました。
が、相手が誰であろうと、その場の観衆に受けることを第一義としているトランプですから、口を開けば、もうはりきってプロ・イスラエル、プロAIPACトーク全開です。オバマを非難することも忘れません。
「今年はオバマ大統領の最後の年だ、イエイ!イスラエルにとってオバマの存在は最悪の出来事だった。みなさんのほうがそれはよくわかってると思うけど」
そして、それはAIPACの観衆のツボにはまり、スタンディングオベーションの拍手喝采。

が、翌日、AIPACはこれに対して謝罪文を発表しました。「現大統領を侮辱するのはAIPACの本意ではなく、それを認めるものでもない。われわれを分裂させるようなスピーチがわれわれのステージで行われ、それを喝采する聴衆がいたことはまことに遺憾である」といった内容のものです。トランプをわざわざよんでおいて、何を今さらな感じですが、トランプのプロ・イスラエル演説に喝采するAIPACメンバーはユダヤ系アメリカ人を代表するものではない、という抗議が内部からあったものと思われます。つまり、あんなクレージーなトランプサポーターと一緒にされたら、大変だ、と慌てたわけです。

アメリカの中東外交政策は、AIPACのようなプロ・イスラエルのロビーによって、常にプロ・イスラエル路線をとってきたといわれます。ところが、オバマはネタニヤフ政権の極右政策には同調してきませんでした。オバマ政権の外交成果として世界でおおむね評価されているイラン核合意も、イスラエルは猛反対でした。AIPACも共和党と共にイラン核合意反対をバックアップしていました。だからこそトランプの演説に拍手喝采するAIPACメンバーがいたわけです。が、それがAIPACがユダヤ系アメリカ人のマジョリティの感覚からもアメリカ人全般からも離れていることをわかりやすく浮き彫りにする形になりました。盲目的なイスラエル支持は決して今のアメリカ全体に支持されるものではないからです。「AIPACって変じゃないか?」ってことに、世の中が注目してしまったのです。トランプは相変わらずパンドラの箱を開けまくっています。

このAIPACの年次集会で過激なプロ・イスラエル発言をしていたのはトランプだけではありません。トランプとは違ってプロの政治家としてのポリティカリーコレクトネスを保ってはいても、AIPACの集会ではできるだけイスラエルよりのスピーチをするのは、どの候補も同じです。その中でも聴衆への迎合ぶりではトランプ以上とも言えるスピーチをしていたのがヒラリーです。「イスラエルへの攻撃や反ユダヤ主義は許してはならない、パレスチナはテロリストへの支持をやめるべきだ、アメリカはイスラエルを攻撃や孤立化から守る」と、徹頭徹尾イスラエル支持の鷹派ぶり。オバマ政策への非難こそしていませんが、自分はオバマよりプロ・イスラエルの大統領になると示唆しているようなスピーチでした。トンデモ発言が既にデフォルトになっているトランプより、このヒラリーのスピーチにドン引きしたリベラルも少なくないと思います。

ヒラリーは中東に関しては二国家解決案(Two state solution)を目指すという方針を表明しているはずなのですが、このスピーチでは見事にもう一方の立場からの視点が欠落しています。
このAIPACの年次集会には共和党、民主党両党の大統領候補全員がスピーカーとして招かれていたのですが、ただ一人欠席したのがバーニー・サンダースです。選挙運動のスケジュールと合わなかったためというのがその理由です。サンダースは遠隔からのビデオスピーチでの参加を申し入れたのですが、AIPACはそれを拒否したそうです。かくして唯一のユダヤ人候補であるバーニー・サンダースだけがAIPACでスピーチをしないという皮肉なことになりました。

そのサンダースが、同日の夜、CNNのビデオインタビューでイスラエルとパレスチナについて語ったことを聞くと、AIPACがビデオスピーチを拒否したことが腑に落ちます(AIPACは過去にミット・ロムニーのビデオスピーチは受け入れている)。これは、ヒラリーのスピーチとは逆の意味で、異例なものでした。

「イスラエルの存在は支持するけれども、中東の平和のためにはガザのパレスチナ人の人権にも目を向けなければならない。高い失業率、貧困、崩壊したコミュニティといった彼らの置かれた状況を改善することなく平和は有り得ない。イスラエルへの攻撃は認めるべきではないが、イスラエルは悪いこともしている。たとえば、イスラエルはパレスチナのテリトリーへの進出はやめるべきだ。戦争では軍事上の必要以上の攻撃がパレスチナになされた。アメリカは両サイドに働きかけなければいけない。」だいたいこんな内容です。

イスラエル問題に関して、こうしたまともな見解を述べたアメリカの大統領候補はこれまで誰もいませんでした。ともかくイスラエル支持はデフォルト、イスラエル批判はタブーだったのです。ブルックリン出身のユダヤ人で、若い頃にはイスラエルのキブツで暮らしたこともあるというバーニー・サンダースだからこそ言えることでもあります。

民主党支持者の間で、バーニー支持かヒラリー支持かは年代できっぱり分かれていて、若年層は圧倒的なバーニー支持、シニア層はヒラリー磐石となっています。その間に挟まれた中年層は、予備選挙が開始されて以来ヒラリーとバーニーの間で揺れていました。「大統領選ウォッチ3」で書いたように、あの時点では「共和党のトンデモ候補にさえならなければ、ヒラリーでもバーニーでもどっちでもいい」という空気がありました。しかし、あれから2ヶ月あまりが過ぎた今、「どっちでもいい」感は消えつつあります。それぞれの候補についての情報が入ってくるほどに「ヒラリーだめじゃん」なのです。
もともと、バーニーが最初から主張していた「スーパーPACから多額の資金をもらい、ゴールドマンサックスでの数回の講演料に総額67万ドル(約7千万円!)ももらってるヒラリーにウォールストリートや巨大企業の規制などまともにできるわけがない」という主張はかなり説得力がありました。「7千万円の講演というのはさぞ素晴らしいものだったでしょうから、ぜひトランスクリプトを公開して国民のみなさんと共有してください。」というリクエストをまったく無視しているヒラリーの対応もまた不信感をよぶものでした。

イランやアフガニスタンへの侵攻の是否を問う投票で過去3回とも賛成票を投じているヒラリーの上院議員として投票歴も、背後にいろいろな事情はあるにしてもポジティブなイメージはありません(バーニーの国会議員としての投票歴はいずれも一貫して反対票)。そしてNAFTAやTPPやといった通商条約にも賛成(これもバーニーはすべて反対)、TPPに関しては選挙戦に入ってから反対に転じていて、これもまたリベラル層に対してポジティブな要因にはなりません。

TPPに限らず、弱者の味方としてポピュリスト路線を行くバーニーの主張にひっぱられて、選挙戦が始まってからヒラリーがよりプログレッシブになってきているというのは、既によく言われていることです。バーニーを真似するヒラリーというのはSNLでもパロディのネタになっています。

バーニーの弱点は外交や防衛での経験に欠ける点であるとされていますが、確かに討論会では、外交や防衛、移民政策の話になると、ヒラリーの論調のほうが具体性に富んでいて、危なげのなさは感じさせます。が、社会政策の話では、わかりやすさでもインパクトでもバーニーの主張に負けるヒラリーが防衛の話になると、急にいきいきとしてくるところは、なんだかますます「女のおじさん」、しかも保守系オヤジのようです。

50代、60代のリベラルな女性層にとって、ヒラリーは20年前にファーストレディとして登場して以来いろいろな意味で自分自身を投影しやすい存在であり、初の女性大統領を支持したい、という気持ちはどこかにずっとあったと思います。が、バーニーの登場により、ヒラリーについて知れば知るほどに「違う」感が大きくなる。1年前まではヒラリー支持を疑わなかった自分たちがバーニー支持に転向していくには、それなりに複雑な思いがあります。

同じ女性層でも70代以上のグランマ世代のヒラリーへの支持は揺らぎません。初の女性大統領を誕生させることの意味が、アメリカの第一世代のフェミニストといえるこの世代の女性の間では大きいのです。第一世代のフェミニストは中産階級の誰もが経済的に専業主婦でいられた世代です。そして中産階級がマジョリティとして存在していた世代です。今の若い人たちが置かれている厳しい現実を実感していません。「私たちも孫のための世界を考えている」と主張するシニアもいますが、孫の幸せというのは、子供の幸せに比べてずっと抽象的なものです。多額の学費ローンを抱えて大学を出てもまともな仕事のない子供たち、独立できずに実家に戻ってくる子供たちと現実の生活で向き合っている世代とは違います。初の女性大統領を誕生させることができないことは無念ではあるが、どう考えても現状を変えてくれるとは思えないヒラリーを支持するわけにはいかない、というのが中間世代です。圧倒的にバーニー支持の若年層の女性の間では、女性大統領というコンセプト自体がまったく意味を失っています。

まだまだサンダースはヒラリーにリードされていますが、この先の予備選挙がリベラル層の本拠地であるブルーステートに移ることを思えば、サンダース逆転も有り得ないことではありません。あのピケティ(アメリカ大統領選ウォッチ4)はバーニー・サンダースが勝つとは予想していませんが、バーニーの登場によってアメリカの流れが変わり、将来、バーニーよりもっと若く、白人ではない誰かがバーニーのような思想をもった大統領になる日が来ると言っています。

バーニー・サンダースについてはおそらく日本ではほとんど報道されていないと思います。反エスタブリッシュメントのポピュリストとして、トランプとセットのように扱われている場合すらあるようです。ニューヨークタイムズ紙もヒラリー・クリントン支持を打ち出しているように、反ビッグマネーであるバーニー・サンダースはその人気に見合ったアテンションをメディアから受けていないからです。あまりにも面白すぎる共和党のドタバタの影に隠れがちですが、私は今回の選挙戦で一番重要なのはバーニー・サンダースの登場だと思っています。

ところで、日本の政府はいまだに親日的な共和党が政権をとってくれるといいなあ、とか思ってるんでしょうかね。

アメリカ大統領選ウォッチ9

大統領候補を選ぶのは誰だ

さて先週のSuper Tuesday 第3弾は、共和党はトランプ、民主党はヒラリー圧勝となりました。地元フロリダで負けたルビオが撤退し、ケーシックが地元オハイオで勝ったことで共和党はケーシック、クルーズ、トランプの3人の戦いとなりました。

民主党はヒラリー全勝とはいえ、ヒラリーが大差で勝ったのはフロリダのみで、獲得デリゲート数で見るとミズーリは同数、イリノイは1人の差。サンダースはさらに引き離されつつはあるものの、まだまだやる気満々です。予備選挙で候補が撤退する大きな理由の一つに資金の枯渇があるのですが、サンダースの場合、その資金が枯渇しないのです。それは1口あたり平均27ドルの個人の寄付に頼っているから。予備選挙前の時点ではサンダースは資金力でヒラリーに負けると思われていましたが、蓋を開けてみれば、サンダースは個人からの小口寄付でヒラリーのスーパーPAC以上の資金を集めてしまったのです。しかも小口寄付のほうが遥かに持久戦に向いています。100万ドルの出資者にもう一度出してくれというのは難しいですが、27ドルの個人支援者は声をかければ、また寄付してくれるのです。先週、ヒラリーは資金集め運動のため5日間にわたって一般市民の前から姿を消していましたが、サンダースにはそういう必要もなく、相変わらず行く先々のラリー(集会)で会場に入りきらないほどの聴衆を集めています。

選挙戦の中休み状態のようなこの1週間、話題は共和党の対トランプ対策一辺倒です。共和党エスタブリッシュメントとしては、なんとしても党大会の決戦投票まで持ち込んでトランプをしりぞけたい。しかし、果たしてそれができるのか、プライマリーやコーカスの投票結果を無視していいのか、といったことがメディアでもさんざん話題になっています。一番衝撃的だったのは、共和党の役員がNBCのインタビューに答えて言った言葉です。

「大統領候補を決めるのは政党であって、一般市民じゃないんだよ。メディアは投票者が候補を選ぶような印象を与えてるから、それで問題があるように見えるだけなんだ」
ベテランのキャスターも「ええっ!それじゃあプライマリーやコーカスは何のためにあるんだ?!」とのけぞっていましたが、実は理論的には確かにそうなのだ、という解説がその後あちこちでされていました。政党とはしょせんプライベートクラブであって、政府ではない。したがって政党の候補を選ぶ予備選挙は国政選挙ではないし、規則だって党が勝手に決めていいというわけです。

年中、メンバーの入れ替えやら名前変えやらをしている日本の政党を考えてみれば、政党はプライベートクラブだということは実にわかりやすい。が、20世紀以降、二大政党からしか大統領が出ていなくて、あらゆる議員がほとんど二大政党に属しているアメリカでは、共和党と民主党も政府組織のように見えてしまいます。しかし、実は予備選挙はプライベートクラブの代表選びだったのです。つまり、プライマリーやコーカスは投票で選んでいるふりをするためのもので、都合が悪かったら結果を変えちゃってもかまわないってことです。いやあ、目からうろこです。

が、この「一般市民が参加しているふり」をないがしろにすると本物の国政選挙で嫌われてしまうのではないかというのが政党の恐れるところです。大統領選挙の本選挙もさることながら、政治家が一番おそれているのはもちろん上院、下院選挙で議席を失うこと。ですから、トランプおろしの戦略にも、それ自体にも共和党議員の間で賛否両論があります。

現在のところ、共和党エスタブリッシュメントの親玉たちのプランは、クルーズをバックアップして、トランプの過半数獲得を阻止して党大会決戦に持ち込む、というものです。が、そのままクルーズを候補にしようという気がないのは明らかです。ミット・ロムニーは「クルーズは支持しないが、予備選挙の投票はクルーズにするように」というあからさまな指示を出しています。党大会でクルーズでもトランプでもない誰かを党大会で候補にしてしまおうというわけです。党のルールによれば党大会決戦になった場合は、それまで候補ではなかった第三者を候補として選んでしまうことも可能だからです。が、それではあまりにも予備選挙が「一般市民が参加しているふり」だったことが見えみえです。本選挙で反発されることを危惧する声も当然あります。そして「われわれの最終目的は民主党のヒラリーに勝つことなんだから、目的遂行のためにトランプで行くべきだ」という、それはちょっと違わないか、みたいな意見ももちろんあります。

さらにエスタブリッシュメントにとって都合の悪いのは、ケーシックが断固として撤退しないこと。地元オハイオで勝つことがトランプ阻止のために党幹部がケーシックに期待していたことですが、それを果たした今、ケーシックははっきり言って用済みです。反トランプ票をクルーズと分けることになれば、ケーシックの存在は勝者総取り州ではトランプに有利になるだけです。が、ケーシックは「ぼくは大統領になるために選挙戦を戦っているんだ。トランプ阻止のためではない」と正論でがんばっています。たしかにケーシックは現在の共和党候補の中で唯一のオーセンティックかつまともな大統領候補です。が、これまでオハイオ以外での得票率はほとんど一桁。

共和党の中では予備選挙でトランプに過半数をとられ党大会決戦に持ち込めなければ、インディペンデントで別候補をたてるという案さえ出ていますから、どう転んでもまだまだ泥沼状態必須の共和党です。

アメリカ大統領選ウォッチ8

ニューヨークもLAもかやの外

さて、今日はSuper Tuesday 第3弾。デリゲート数の多い主要州の予備選挙が行われます。共和党についてはこれから勝者総取りとなります。注目はフロリダとオハイオ。共和党はトランプ独走を食い止められるのか、民主党はオハイオでサンダースがヒラリーに勝てるか、が注目の的となっています。

大統領選挙については、日本の報道はたまにしか見ないのですが、日曜日の日本の大手メディアが軒並み「ルビオがワシントンDCで勝った」ということを見出しにしていたので、のけぞりました。アメリカのメディアで大きくとりあげたところはどこもありません。「えっそうだったの?」という程度です。理由は、そんなのどうでもいいことだから。

まず、ワシントンDCは規模として州ではなく市に近いのでデリゲート数も少ない。19人のデリゲートをルビオ10人、ケーシック9人で分けたわけですが、これは、プエルトリコの27人より少ない。そして、エスタブリッシュメントのおひざもとなんですから、最初からルビオとケーシックが強いのは刷り込み済み。さらに、何よりも「ルビオは終わった」というのが週末の時点では既にコンセンサスとなっていたので、DCで勝ったなんてことはまったく意味がないのです。ルビオ自身も、オハイオ州では自分への投票を考えている有権者は最も勝てる可能性の高いケーシックに投票するように、という声明を出したほどです。

アメリカで毎日24時間こればっかりというほど報道されていることを5分かそこらでサマライズするのは、難しかろうとは思っていたのですが、どうしてここまで外してしまうのか。ひょっとして報道する側が大統領選の仕組みをわかってないんじゃないか、ワシントンDCだから、首都だから重要と考えたんじゃないか、とあまりにもさむーい想像をしてしまいました。
ワシントンDCに限らず、普段はアメリカに関するニュースの中心になっている主要経済文化圏は、大統領選挙では一番どうでもいい存在になっています。それは大統領選挙のシステムにわけがあります。

大統領選挙というのは、Electoral College(選挙人団)を選ぶ形式的間接選挙で、各州の人口に応じて選挙人の割り当て人数が決まっています(これも人口の多い州に不公平にできてはいるんですが)。たとえば、最大のカリフォルニア州は55人、次のテキサス州は38人、その次がニューヨーク州とフロリダ州の29人、一番少ないのはアラスカ州やモンタナ州の3人です。それなら、選挙運動は選挙人数の多いカリフォルニアやニューヨーク中心に展開しそうなものですが、そうはならないのです。それは、選挙が勝者総取りだからです。つまり51%対49%の僅差で勝っても、90%対10%の大差で圧勝してもカリフォルニア州で勝てば勝った方が選挙人55人すべてを取り、負けたほうには一人もいきません。そして、アメリカのほとんどの州は、共和党支持州と民主党支持州できっぱり別れています。
次の図は、各州の選挙人団の割り当て数と民主党(青)と共和党(赤)の勢力図です。

swing

たとえばニューヨーク州とカリフォルニア州は民主党が磐石なので、共和党支持者の票は死に票がデフォルトです。民主党支持者にしたところで、負けるはずのない選挙なんだから別におれ一人の票なんか、という話です。磐石なので民主党候補はニューヨークやカリフォルニアで選挙運動なんかしません。共和党候補も無駄なのでしません。共和党磐石のテキサス州はその逆でやはり無視されます。というわけで、大統領候補が熱心にやってくるのは、選挙戦前のファンドレージングのときだけというニューヨークやロサンゼルスの市民は大統領選挙では毎度深い無力感を味わうわけです。もちろん無視されるのはカリフォルニアとニューヨークばかりではありません。真ん中あたりの共和党磐石の州も含め、上の図で赤か青になっている州はすべてかやの外です。

選挙戦はどこで展開されるのかというと、共和党と民主党が拮抗しているスイングステートといわれる州です。上の図でベージュになっている州です。中でも大統領選挙で、いつも一番注目されるのは最大の選挙人数をかかえるフロリダ州です。そしてオハイオ州もいつも激戦区となります。というわけで、大統領選挙では、有権者5人中4人の有権者の票は無視されるといわれています。レッドステートとブルーステートの若者は、自分の選挙権を行使するより、フロリダかオハイオに行って支持候補の選挙運動のボランティアでもしたほうがよほど意味があるという状態になっているのです。

こんな理不尽なことがどうして続いているのかというと、変えることができないから。各州の選挙人団を勝者総取りにするか得票率による分配にするかは、州法によっています。当然民主党の州は民主党総取りを手放したくないし、共和党の州だって同じです。そのうえ、選挙運動をする州が限られているということは、選挙にかかる資金も少なくてすむので、候補者にとっても党にとっても好都合なのです。では、スイングステートの場合はどうかというと、実はコロラドが一時得票率による分配に変更したことがあります。が、すぐにもとの勝者総取りに戻しました。理由は注目(重視)されなくなるから。というわけでスイングステートも勝者総取りを変えたくない。これを変えるには連邦レベルで全州が一気に変えるしかないわけですが、各州の独立自治を重んじるアメリカで、それはまず不可能です。ですからこの理不尽かつ不公平なシステムはアメリカがあるかぎり永遠に続くものと思われます。

予備選挙については、話は少し異なりますが、ニューヨークとカリフォルニアという二大経済文化圏が無視されているという状態はかわりません。ニューヨークの予備選挙は4月、カリフォルニアやニュージャージーにいたっては6月(民主党のDCも6月)と、通常なら各党の大統領候補がほぼ決定している時期に行われます。どの党も候補選びは早すぎても(自党候補への関心がうすれる)、遅すぎてもいけない(お金がかかるし、本番の大統領選挙への対策が遅れる)という各党の都合により順番が決められています。スイングステートが予備選挙の前半に組み込まれているのも偶然ではありません。どうせ選挙運動をするなら大統領選挙本番で重要になる州に存在をアピールしておいたほうが無駄がないからです。

本番の大統領選挙になれば、アメリカ人の5人に4人は、ただひたすらスイングステートにむかってお祈りするしかありません。今年の予備選挙は例外的に両党ともに長引いているので、ニューヨークやカリフォルニアの市民も予備選挙についてだけは、珍しく自分の票が意味をもつ可能性がでてきました。はたして、今年、ニューヨークやカリフォルニアが予備選挙で意味をもてるのかどうかを大きく左右するのが、今日のオハイオとフロリダの結果というわけです。