アメリカ大統領選ウォッチ9

大統領候補を選ぶのは誰だ

さて先週のSuper Tuesday 第3弾は、共和党はトランプ、民主党はヒラリー圧勝となりました。地元フロリダで負けたルビオが撤退し、ケーシックが地元オハイオで勝ったことで共和党はケーシック、クルーズ、トランプの3人の戦いとなりました。

民主党はヒラリー全勝とはいえ、ヒラリーが大差で勝ったのはフロリダのみで、獲得デリゲート数で見るとミズーリは同数、イリノイは1人の差。サンダースはさらに引き離されつつはあるものの、まだまだやる気満々です。予備選挙で候補が撤退する大きな理由の一つに資金の枯渇があるのですが、サンダースの場合、その資金が枯渇しないのです。それは1口あたり平均27ドルの個人の寄付に頼っているから。予備選挙前の時点ではサンダースは資金力でヒラリーに負けると思われていましたが、蓋を開けてみれば、サンダースは個人からの小口寄付でヒラリーのスーパーPAC以上の資金を集めてしまったのです。しかも小口寄付のほうが遥かに持久戦に向いています。100万ドルの出資者にもう一度出してくれというのは難しいですが、27ドルの個人支援者は声をかければ、また寄付してくれるのです。先週、ヒラリーは資金集め運動のため5日間にわたって一般市民の前から姿を消していましたが、サンダースにはそういう必要もなく、相変わらず行く先々のラリー(集会)で会場に入りきらないほどの聴衆を集めています。

選挙戦の中休み状態のようなこの1週間、話題は共和党の対トランプ対策一辺倒です。共和党エスタブリッシュメントとしては、なんとしても党大会の決戦投票まで持ち込んでトランプをしりぞけたい。しかし、果たしてそれができるのか、プライマリーやコーカスの投票結果を無視していいのか、といったことがメディアでもさんざん話題になっています。一番衝撃的だったのは、共和党の役員がNBCのインタビューに答えて言った言葉です。

「大統領候補を決めるのは政党であって、一般市民じゃないんだよ。メディアは投票者が候補を選ぶような印象を与えてるから、それで問題があるように見えるだけなんだ」
ベテランのキャスターも「ええっ!それじゃあプライマリーやコーカスは何のためにあるんだ?!」とのけぞっていましたが、実は理論的には確かにそうなのだ、という解説がその後あちこちでされていました。政党とはしょせんプライベートクラブであって、政府ではない。したがって政党の候補を選ぶ予備選挙は国政選挙ではないし、規則だって党が勝手に決めていいというわけです。

年中、メンバーの入れ替えやら名前変えやらをしている日本の政党を考えてみれば、政党はプライベートクラブだということは実にわかりやすい。が、20世紀以降、二大政党からしか大統領が出ていなくて、あらゆる議員がほとんど二大政党に属しているアメリカでは、共和党と民主党も政府組織のように見えてしまいます。しかし、実は予備選挙はプライベートクラブの代表選びだったのです。つまり、プライマリーやコーカスは投票で選んでいるふりをするためのもので、都合が悪かったら結果を変えちゃってもかまわないってことです。いやあ、目からうろこです。

が、この「一般市民が参加しているふり」をないがしろにすると本物の国政選挙で嫌われてしまうのではないかというのが政党の恐れるところです。大統領選挙の本選挙もさることながら、政治家が一番おそれているのはもちろん上院、下院選挙で議席を失うこと。ですから、トランプおろしの戦略にも、それ自体にも共和党議員の間で賛否両論があります。

現在のところ、共和党エスタブリッシュメントの親玉たちのプランは、クルーズをバックアップして、トランプの過半数獲得を阻止して党大会決戦に持ち込む、というものです。が、そのままクルーズを候補にしようという気がないのは明らかです。ミット・ロムニーは「クルーズは支持しないが、予備選挙の投票はクルーズにするように」というあからさまな指示を出しています。党大会でクルーズでもトランプでもない誰かを党大会で候補にしてしまおうというわけです。党のルールによれば党大会決戦になった場合は、それまで候補ではなかった第三者を候補として選んでしまうことも可能だからです。が、それではあまりにも予備選挙が「一般市民が参加しているふり」だったことが見えみえです。本選挙で反発されることを危惧する声も当然あります。そして「われわれの最終目的は民主党のヒラリーに勝つことなんだから、目的遂行のためにトランプで行くべきだ」という、それはちょっと違わないか、みたいな意見ももちろんあります。

さらにエスタブリッシュメントにとって都合の悪いのは、ケーシックが断固として撤退しないこと。地元オハイオで勝つことがトランプ阻止のために党幹部がケーシックに期待していたことですが、それを果たした今、ケーシックははっきり言って用済みです。反トランプ票をクルーズと分けることになれば、ケーシックの存在は勝者総取り州ではトランプに有利になるだけです。が、ケーシックは「ぼくは大統領になるために選挙戦を戦っているんだ。トランプ阻止のためではない」と正論でがんばっています。たしかにケーシックは現在の共和党候補の中で唯一のオーセンティックかつまともな大統領候補です。が、これまでオハイオ以外での得票率はほとんど一桁。

共和党の中では予備選挙でトランプに過半数をとられ党大会決戦に持ち込めなければ、インディペンデントで別候補をたてるという案さえ出ていますから、どう転んでもまだまだ泥沼状態必須の共和党です。

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投稿者: motokokuroda

アメリカ生活も四半世紀を超えました。お料理から政治まで、興味のおもむくままに。

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