アメリカ大統領選ウォッチ8

ニューヨークもLAもかやの外

さて、今日はSuper Tuesday 第3弾。デリゲート数の多い主要州の予備選挙が行われます。共和党についてはこれから勝者総取りとなります。注目はフロリダとオハイオ。共和党はトランプ独走を食い止められるのか、民主党はオハイオでサンダースがヒラリーに勝てるか、が注目の的となっています。

大統領選挙については、日本の報道はたまにしか見ないのですが、日曜日の日本の大手メディアが軒並み「ルビオがワシントンDCで勝った」ということを見出しにしていたので、のけぞりました。アメリカのメディアで大きくとりあげたところはどこもありません。「えっそうだったの?」という程度です。理由は、そんなのどうでもいいことだから。

まず、ワシントンDCは規模として州ではなく市に近いのでデリゲート数も少ない。19人のデリゲートをルビオ10人、ケーシック9人で分けたわけですが、これは、プエルトリコの27人より少ない。そして、エスタブリッシュメントのおひざもとなんですから、最初からルビオとケーシックが強いのは刷り込み済み。さらに、何よりも「ルビオは終わった」というのが週末の時点では既にコンセンサスとなっていたので、DCで勝ったなんてことはまったく意味がないのです。ルビオ自身も、オハイオ州では自分への投票を考えている有権者は最も勝てる可能性の高いケーシックに投票するように、という声明を出したほどです。

アメリカで毎日24時間こればっかりというほど報道されていることを5分かそこらでサマライズするのは、難しかろうとは思っていたのですが、どうしてここまで外してしまうのか。ひょっとして報道する側が大統領選の仕組みをわかってないんじゃないか、ワシントンDCだから、首都だから重要と考えたんじゃないか、とあまりにもさむーい想像をしてしまいました。
ワシントンDCに限らず、普段はアメリカに関するニュースの中心になっている主要経済文化圏は、大統領選挙では一番どうでもいい存在になっています。それは大統領選挙のシステムにわけがあります。

大統領選挙というのは、Electoral College(選挙人団)を選ぶ形式的間接選挙で、各州の人口に応じて選挙人の割り当て人数が決まっています(これも人口の多い州に不公平にできてはいるんですが)。たとえば、最大のカリフォルニア州は55人、次のテキサス州は38人、その次がニューヨーク州とフロリダ州の29人、一番少ないのはアラスカ州やモンタナ州の3人です。それなら、選挙運動は選挙人数の多いカリフォルニアやニューヨーク中心に展開しそうなものですが、そうはならないのです。それは、選挙が勝者総取りだからです。つまり51%対49%の僅差で勝っても、90%対10%の大差で圧勝してもカリフォルニア州で勝てば勝った方が選挙人55人すべてを取り、負けたほうには一人もいきません。そして、アメリカのほとんどの州は、共和党支持州と民主党支持州できっぱり別れています。
次の図は、各州の選挙人団の割り当て数と民主党(青)と共和党(赤)の勢力図です。

swing

たとえばニューヨーク州とカリフォルニア州は民主党が磐石なので、共和党支持者の票は死に票がデフォルトです。民主党支持者にしたところで、負けるはずのない選挙なんだから別におれ一人の票なんか、という話です。磐石なので民主党候補はニューヨークやカリフォルニアで選挙運動なんかしません。共和党候補も無駄なのでしません。共和党磐石のテキサス州はその逆でやはり無視されます。というわけで、大統領候補が熱心にやってくるのは、選挙戦前のファンドレージングのときだけというニューヨークやロサンゼルスの市民は大統領選挙では毎度深い無力感を味わうわけです。もちろん無視されるのはカリフォルニアとニューヨークばかりではありません。真ん中あたりの共和党磐石の州も含め、上の図で赤か青になっている州はすべてかやの外です。

選挙戦はどこで展開されるのかというと、共和党と民主党が拮抗しているスイングステートといわれる州です。上の図でベージュになっている州です。中でも大統領選挙で、いつも一番注目されるのは最大の選挙人数をかかえるフロリダ州です。そしてオハイオ州もいつも激戦区となります。というわけで、大統領選挙では、有権者5人中4人の有権者の票は無視されるといわれています。レッドステートとブルーステートの若者は、自分の選挙権を行使するより、フロリダかオハイオに行って支持候補の選挙運動のボランティアでもしたほうがよほど意味があるという状態になっているのです。

こんな理不尽なことがどうして続いているのかというと、変えることができないから。各州の選挙人団を勝者総取りにするか得票率による分配にするかは、州法によっています。当然民主党の州は民主党総取りを手放したくないし、共和党の州だって同じです。そのうえ、選挙運動をする州が限られているということは、選挙にかかる資金も少なくてすむので、候補者にとっても党にとっても好都合なのです。では、スイングステートの場合はどうかというと、実はコロラドが一時得票率による分配に変更したことがあります。が、すぐにもとの勝者総取りに戻しました。理由は注目(重視)されなくなるから。というわけでスイングステートも勝者総取りを変えたくない。これを変えるには連邦レベルで全州が一気に変えるしかないわけですが、各州の独立自治を重んじるアメリカで、それはまず不可能です。ですからこの理不尽かつ不公平なシステムはアメリカがあるかぎり永遠に続くものと思われます。

予備選挙については、話は少し異なりますが、ニューヨークとカリフォルニアという二大経済文化圏が無視されているという状態はかわりません。ニューヨークの予備選挙は4月、カリフォルニアやニュージャージーにいたっては6月(民主党のDCも6月)と、通常なら各党の大統領候補がほぼ決定している時期に行われます。どの党も候補選びは早すぎても(自党候補への関心がうすれる)、遅すぎてもいけない(お金がかかるし、本番の大統領選挙への対策が遅れる)という各党の都合により順番が決められています。スイングステートが予備選挙の前半に組み込まれているのも偶然ではありません。どうせ選挙運動をするなら大統領選挙本番で重要になる州に存在をアピールしておいたほうが無駄がないからです。

本番の大統領選挙になれば、アメリカ人の5人に4人は、ただひたすらスイングステートにむかってお祈りするしかありません。今年の予備選挙は例外的に両党ともに長引いているので、ニューヨークやカリフォルニアの市民も予備選挙についてだけは、珍しく自分の票が意味をもつ可能性がでてきました。はたして、今年、ニューヨークやカリフォルニアが予備選挙で意味をもてるのかどうかを大きく左右するのが、今日のオハイオとフロリダの結果というわけです。

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投稿者: motokokuroda

アメリカ生活も四半世紀を超えました。お料理から政治まで、興味のおもむくままに。

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