アメリカ大統領選ウォッチ4

アメリカ大統領選ウォッチ4
スーパーデリゲートってなんだ?

さて、アイオワに続くニューハンプシャーのプライマリーは、得票率でサンダースが60%、ヒラリーが38%とサンダースが圧勝しました。もともとサンダースの地元に近いニューハンプシャーはサンダース有利と見られてはいたのですが、これだけの大差が出たことでサンダースはさらに勢いをつけました。
最近のサンダースを見ていると、かつてのアメリカの人気番組「アメリカン・アイドル」を思い出します。数多くの応募者の中から視聴者投票によって毎週勝ち抜いていくという番組ですが、番組開始時にはみな一様になんだかもっさりしてるんですが、勝ちあがっていく子は決勝戦までのほんの数ヶ月間で驚くほど輝きを増していくのです。今のバーニー・サンダースはまさにそんな感じ。私が初めてサンダースを知ったのは去年の夏です。たまたまシアトルにいて、ワシントン大学でのサンダースのラリー(集会)に行きました。会場に入りきれない学生が溢れる熱狂ぶりでしたが、印象としては、話もそんなにうまくないし、もそもそしてて、なんだかなあ、だったのです。それがこの半年でいつのまにか輝くオーラを身につけてしまいました。20代から政治の世界にあって注目されることなく50年、74歳のアメリカン・アイドルの誕生です。
あの格差論の本家、ピケティにまで「バーニー・サンダースの登場はアメリカの方向を変える」と言わせています。
http://www.theguardian.com/us-news/commentisfree/2016/feb/16/thomas-piketty-bernie-sanders-us-election-2016
さて、大統領選の予備選挙というのは、アメリカ大統領選ウォッチ2 で解説したように、どの候補者に投票するかが決まっているデリゲート(delegate 代理人)を選ぶ形式的な間接選挙です。得票率がどのようにデリゲート数につながるのかは州ごとにちがうルールがあるのですが、ニューハンプシャーの場合はサンダースが15人、ヒラリーが9人獲得しました。アイオワ州ではほぼ互角だったので、これでサンダースがぐっとリード、と見えますが、実はそう簡単にはいかないのです。
現在のデリゲート獲得予想数はクリントンが481人、サンダースが55人です。なぜ、こういうことになるかというと、民主党にはスーパーデリゲートというものが存在するからです。デリゲートはプライマリーやコーカスによって選ばれます。スーパーデリゲートというのは、そうしたプロセスなしに最初から投票権をもっているデリゲートで、民主党の下院議員、要職経験者(元大統領など)、党役員から構成されています。つまり民主党のエスタブリッシュメントです。その多くがヒラリーについているわけです。予備選の投票権をもつ民主党デリゲートの総数は5083人ですが、そのうち747人がスーパーデリゲートです。プライマリーやコーカスで選ばれたデリゲートは、それぞれ投票する候補が予め決められていますが、スーパーデリゲートは誰に投票するのも自由です。
747人のうち、現在のところヒラリー支持を表明しているのが449人、サンダースが19人。残りは未表明ですが、スーパーデリゲート獲得は民主党内に強力な地盤をもつヒラリーが圧倒的に有利と見られています。
実は、このスーパーデリゲートという制度は、最近急に注目を集めています。1982年から続いていながら、これまでさほど注目されてこなかったのは、プライマリーやコーカスの結果とスーパーデリゲートの配分にここまでの落差がなかったからです。サンダースに勝ち目はないといわれていた理由の一つに、スーパーデリゲートはヒラリーが総取りという前提がありました。それでも去年の時点では、どう転んでもサンダースがヒラリーに勝てるはずかない、というのがサンダース支持者も含めた大方の見方だったので、スーパーデリゲートについてもさほどの批判が集まらなかったのです。
しかしアイオワとニューハンプシャーでのサンダースの予想以上の健闘ぶりから、もしかしてサンダースいけるかも、ということになって事情が変わりました。スーパーデリゲート制度が「民主的でない」と、批判の槍玉にあがることになったのです。
もともとはさりげなくエスタブリッシュメントの意向を後押しという目的で作られたスーパーデリゲート制度ですが、こんな風にネガティブな注目を集めては、さりげなく後押しなんてわけにはいきません。もしサンダースが投票によるデリゲート数で勝って、スーパーデリゲートによって負けるということになると、民主党は民意を反映していないという批判にさらされることは避けられない。そうすれば11月の総選挙にだっていい影響があるわけはない。スーパーデリゲートだって心穏やかではないでしょう。
まだ支持未表明のスーパーデリゲートはもとより、支持を表明していても、党大会での投票時点まで変更は可能です。実は8年前の予備選でもヒラリーが優勢だったスーパーデリゲートの獲得数は、オバマが一般の支持を増やすに従って逆転しています。スーパーデリゲートも政治家ですから、わが身がかわいい。かなりの数のスーパーデリゲートは、これからサンダースがどこまで伸びるか様子見状態に違いありません。ここにきて、ヒラリー有利にはちがいないけれど、流れによっては必ずしもヒラリー総取りという結果にはならないかも、といわれるようになりました。でも、そうなると、いったいスーパーデリゲートって何のためにあるんだよ、ってことになります。どっちに転んでも民主党にとって頭痛の種になりそうです。

 

一方の共和党ですが、ニューハンプシャーはトランプの勝利で35.5%、2位がこれまでノーマークだったケーシックで15.8%、その後はクルーズ11.7%、ブッシュ11%、ルビオ10.6%と、ほぼ同列。アイオワでトランプに肉薄したルビオは討論会の失敗が響いて転落。これによって、共和党エスタブリッシュメントの支持はブッシュ、ルビオにケーシックという伏兵も加わって、ますます一本化から遠ざかることになりました。つまり、ますますトランプやクルーズに有利になるということです。共和党エスタブリッシュメントにとっては、ますます不都合な方向に向かっているわけです。

ニューハンプシャーのプライマリーの結果にはニューハンプシャー州の予備選挙の制度が大きく影響しています。プライマリーには、州によって、事前に登録した党員だけが、その党のプライマリーに参加できるクローズ方式と、誰でも投票できるオープン方式があります。ニューハンプシャー州のプライマリーというのは、投票所でその場で登録可能な実質的なオープンプライマリーです。アメリカ人の42%がインディペンデント(independent、無党派)ですが、ニューハンプシャーではインディペンデントはどちらの党でも好きな方のプライマリーに投票できます。(両方には投票できません)。つまり、インディペンデントの傾向がより大きく反映されるのです。

プライマリー前のニューハンプシャーの街頭インタビューでは「誰に投票しますか?」という質問に「トランプかサンダースで迷ってる」と答えている人がいました。つまり民主党のプラマリーに参加するか、共和党のプライマリーに参加するか迷っているということです。
トランプかサンダースってそんな馬鹿な、と思うかもしれませんが、実はこれが今回の大統領選の空気です。エスタブリッシュメントに愛想をつかした人々が極左と極右に走っているわけではなかったのです。右だ左だなんてことが、きっともうオワコンなのです。政治家がタブーだと思ってたことが実は全然たいしたことがなかったというのが、次々と露呈してしまっているのが、今回の大統領選です。だから、ヒラリーの方が本選挙で共和党に勝てる、という予想もあやしくなっているわけです。

明日はネバダ州で民主党のコーカス。サウスカロライナ州で共和党のプライマリー。23日にネバダ州で共和党のコーカス、27日にサウスカロライナ州で民主党のプライマリーです。
サウスカロライナ州の世論調査では黒人層に強いヒラリーの勝ちが予想されていますが、ネバダ州はヒラリーとサンダースがほぼ拮抗しています。ネバダでサンダースが勝つかヒラリーが勝つかが要です。共和党の世論調査はネバダもサウスカロライナもトランプ、クルーズ、ルビオの順になっています。でも直前になってローマ教皇から「キリスト教徒にあらず」と批判されてしまったトランプのダメージは少なくないはずです。フランシスコ教皇はラディカルな教皇としてカソリック以外のアメリカ人にも抜群の人気を誇っています。特にカトリックが多いラテン系からの支持には壊滅的な影響があるはず。そうなるとラテン系に強いルビオはここで一気に挽回できるか。共和党は共和党で目が離せません。

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投稿者: motokokuroda

アメリカ生活も四半世紀を超えました。お料理から政治まで、興味のおもむくままに。

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