アメリカ大統領選ウォッチ3

アメリカ大統領選ウォッチ3
ヒラリーは女性票を獲得できるか

ニューハンプシャーのプライマリーを直前に控えたこの週末の話題は、討論会で大ミソをつけたマルコ・ルビオとヒラリーのサポーターであるフェミニズムの重鎮たちの失言騒動です。これで、予備選挙はますます先が読めなくなりました。
若年層の圧倒的な支持を得ているサンダースはアイオワ予備選で30歳未満の84%という、かつてのオバマを超える強さを見せました。若年層ほどエスタブリッシュメントに対する不信感が強いということでです。
ヒラリーは「初の女性大統領」というのが大きなセールスポイントではありますが、これはリベラル候補であるヒラリーにとって必ずしも売りにつながりません。アメリカというのはマッチョ文化がしみついた国ですから、保守層にとっては、女性であることがネガティブになることは多いに有り得ます。が、民主党やインディペンデントのリベラルな女性は「女性だから」という理由では投票しないのです。それがリベラルというものだからです。ニューハンプシャー民主党予備選挙に関する調査では、45歳未満の女性の64%がサンダース支持、45歳以上ではヒラリーがややリード、圧倒的にヒラリーを支持している世代は65歳以上となっています。中高年以外はサンダース支持が圧倒的なのです。
つまり、リベラル候補であるヒラリーは女性であることの不利益はこうむっても、それによって利益は受けられないということです。こんなことは誰でもわかっていることだと思っていました。ところが、アメリカン・フェミニズムの大御所は理解していなかったのです。
ヒラリーのニューハンプシャーのラリー(集会)に応援演説に来たオルブライト(アメリカ初の女性元国務長官、78歳)が「ここまで私たちは努力して梯子を上ってきた。若い人たちはもう登りきったと思ってるかもしれないけど、まだまだやらなきゃならないことがある。革新、革新っていうけれど、女性大統領ほどの革新があるか。女どうしが助け合わなくてどうする!」と檄を飛ばしました。

こういう説教口調が若い世代にアピールするとは思えませんが、これだけならまだよかった。ヒラリー陣営にとって不運だったのは、時を同じくしてフェミニズムの大御所グロリア・スタイネム (81歳)がテレビのトーク番組でトンデモ発言をしたことです。なぜヒラリーは若い女性たちに支持されないのか、と執拗に尋ねられたときの答えがこれ。
「女性は年を重ねるほどにラディカルになるの、男性は年齢とともに保守的になるのよ、得るものがあるから。女性は得るものがないから、年とともにラディカルになる。若い女の子は、『男の子はどこにいるんだろう』『あ、バーニーのところにいた』ってことになるのよ」

インタビュー全体をみれば、うっかり言っちゃった感がいっぱいなのはわかります。インタビュアー(男)は「おおっ、それってぼくがいったら、たたかれるちゃうよね!?」と反応しているように、アメリカの政治家やタレントなら口が裂けても言わないようなことです。まるでどこぞの国の大臣のような失言。結果は大炎上。後から発言撤回とお詫びをしていましたが、こういうものはもう言ったが最後です。
大学生なんて高校生に毛の生えたようなものですから、ただでさえ、ピアプレッシャーに弱い。30歳未満の84%という数字はそういう意味でちょっと心配でもあります。そこまでサンダース支持が広がるとヒラリー支持を貫くには逆に根性がいります。84%という数字には若い世代特有のピアプレッシャーの影響がかなりある、と私は思います。が、そのモチベーションを男としたところがスタイネムのオールドスクールぶりです。そういう例だってきっとあると思いますが、「それを言ってはおしまい」なのです。本人たちはピアプレッシャーに影響されているなんて思ってもいないし、思いたくもないからです。
ピアプレッシャーとまでは言わないまでも、逆に中年以上のサンダース支持者には子供に影響された、という人が多くいます。私もサンダースの存在を知ったのは娘を通じてでした。今時の親は子供の言うことを聞きます。が、その逆はないのは、今も昔も同じです。
今、40代、50代のリベラルはサンダースかヒラリーか、で揺れています。正直なところ、「共和党のとんでも候補にさえならなければ、どっちでもいい」という人が多いのではと思います。ヒラリーの1番のセールスポイントは女であることなんかじゃなくて、共和党候補に負ける可能性が低そうなことなのです。それを追求するには女のおじさん路線を突き進まざるを得ない。しかし、それでは若い世代にはアピールできない。
そして、フェミニズムのエスタブリッシュメントには、私たちが血のにじむ思いで勝ち取ってきたものを若い子たちは当然のように思っていて、一緒に戦おうとしない、という憤りがあります。しかし、そんなことは若い世代にはまったく納得できない。男も女も得るものがなくなっちゃってるんですから、男に頼ることも、男と戦うことも意味がないのです。今、リベラルな女性たちは、みんなが引き裂かれて揺れています。
さて、一方の共和党ですが、アイオワ・コーカスで大躍進をとげたマルコ・ルビオが討論会で大失敗。「政治家としての経験が大統領候補としては足りないのではないか」という質問に対して「オバマだって経験が浅いといわれたが、彼はやり方がわかっていなかったわけではない。よくわかっていてアメリカを変えてしまったではないか。ぼくは同じやり方で元の姿のアメリカを取り戻す」と、まあ、ありがちな微妙に論点すりかえ優等生回答みたいなことをしゃべったわけです。そこをついたのがニュージャージー知事のクリス・クリスティです。「アドバイザーに言われた30秒の台詞を言ってるだけじゃないのか」と、執拗につっこまれたのに対して、ルビオは同じような論旨の「オバマ云々」を繰り返してしまったのです。すかさず「ほらまた」とクリスティにつっこまれ、聴衆からはブーイングが出る始末。

たしかに機転のきかない対応ぶりは、まるでハイスクールの討論大会に出た優等生みたいでした。こういう場面では実際の若さに加えて、ベビーフェイスであることも災いします。さらに、マルコ・ルビオは背が低い。いやとりたてて低くはありませんが、他の候補者が揃いも揃ってみんなでかい(190センチ級がそろっています)。
それには理由があって、統計的にアメリカの大統領選というのは背の高い候補が勝つ確率が高いのです。オバマだって、ブッシュだって、クリントンだってでかかった。そういうところがまたマッチョ文化のアメリカです。もちろん身体的特徴を攻撃するのは政治的タブーですから、他の候補に直接それを攻撃されることはありません。が、自称5フィート10インチのマルコ・ルビオは実は5フィート8インチだといううわさがあり、他の候補者が普通のドレスシューズを着用する中、ルビオだけはヒール付きのブーツをはいていることもレポートされています。
背の高さなんて、あまりにもくだらない理由ですが、無視できない歴史的統計があるのです。そして、マッチョ文化の主な担い手である共和党では、それはより強く作用すると思われます。
共和党エスタブリッシュメントは、唯一の希望の星をつぶしにかかったクリスティに怒っているともいわれますが、かつて本命だったはずのジェブ・ブッシュをはじめ、支持率1桁の末端候補が、これで「まだ行けるかも」とはりきったのは確かです。ますますニューハンプシャーの結果もよめなくなりました。
民主党も共和党もますます大混戦です。

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投稿者: motokokuroda

アメリカ生活も四半世紀を超えました。お料理から政治まで、興味のおもむくままに。

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