アメリカ大統領選ウォッチ5

アメリカ大統領選ウォッチ5
共和党がやばい。

 
共和党は、サウスカロライナでケーシックが沈み、ブッシュが撤退したことで、共和党エスタブリッシュメント側の候補はルビオで一本化されました。が、ネバダでもトランプは45.9%という圧倒的な強さを見せ、ルビオは2位につけたものの23.9%。果たして挽回は可能なのかというのが現在の論議の的です。

ところで、このルビオですが、日本のニュース番組で中道穏健派とされていたのでたまげました。おそらくアメリカでルビオを中道穏健派だと思ってる人は誰もいません。そもそもティーパーティをバックに反エスタブリッシュメントとして出て来た政治家ですから極右といってもいいくらいです。自身がラテン系であるために移民政策に関してのみは中道といってもいいかもしれませんが、その他の社会政策に関しては、とんでもなく時代錯誤な保守です。なにしろ、たとえレイプによる妊娠であっても、中絶には反対。アイドルはレーガンで、軍備を増強して強いアメリカの再来を目指すっていうんですから、はんぱじゃありません。これに比べれば、トランプだって穏健ではありませんが中道です。ただしご都合主義のカメレオンとも言われるルビオはトランプやクルーズのような反エスタブリッシュメントではありません。そういう意味で共和党エスタブリッシュメントの考える常識からは一番はずれていないのです。保守中道を行くはずだったブッシュが大コケした今、もうトランプさえなんとかできればルビオでもいい、というのがエスタブリッシュメントのたどりついた妥協案です。

だからリベラルにとってはトランプだろうとルビオだろうとクルーズだろうと誰が勝っても最後に共和党に負けたらブッシュ政権以上の悪夢に違いありません。それだけに、民主党にとっては、11月の本選挙で共和党に勝てる候補ということがますます重要になってきました。ほんの数ヶ月前までは、相手がトランプならラッキーくらいに思っていた民主党も、このトランプの勢いをみて不安を募らせています。

その民主党はネバダはヒラリー52.6%、サンダース47.3%でヒラリーの勝利。次のサウスカロライナ州は最初から黒人層に強いヒラリー勝利が予想されているだけにサンダースの勢いもここまでか、という感じです。それにしても、白人であるヒラリーがどうして黒人層に圧倒的に強く、貧乏人の味方であるはずのサンダース、若い頃には人種差別に反対する民権運動で逮捕歴まであるサンダースが票をとれないのでしょう。一番の理由はおそらく知らないからです。

トランプにダメージを与えるはずと思われたローマ法王事件がラテン系の票にすら何の影響もなかったのも、これが意外と伝わってなかったからなんじゃないか、と思います。これだけ大々的に報道されてるんだから、誰でも知ってるだろうと思うのは大きな間違いで、新聞だってインターネットだってテレビのニュースだって、きっと受け手はごく限られた一部の人たちなのです。世の中の人全部が知ってるヒット曲がなくなった今、世の中の人全部が見てるニュースなんていうものもないのです。情報が増えたってことは、それだけいろんなところに壁ができたということなんだなあ、と選挙戦をみていて、つくづく思います。

アメリカ大統領選ウォッチ4

アメリカ大統領選ウォッチ4
スーパーデリゲートってなんだ?

さて、アイオワに続くニューハンプシャーのプライマリーは、得票率でサンダースが60%、ヒラリーが38%とサンダースが圧勝しました。もともとサンダースの地元に近いニューハンプシャーはサンダース有利と見られてはいたのですが、これだけの大差が出たことでサンダースはさらに勢いをつけました。
最近のサンダースを見ていると、かつてのアメリカの人気番組「アメリカン・アイドル」を思い出します。数多くの応募者の中から視聴者投票によって毎週勝ち抜いていくという番組ですが、番組開始時にはみな一様になんだかもっさりしてるんですが、勝ちあがっていく子は決勝戦までのほんの数ヶ月間で驚くほど輝きを増していくのです。今のバーニー・サンダースはまさにそんな感じ。私が初めてサンダースを知ったのは去年の夏です。たまたまシアトルにいて、ワシントン大学でのサンダースのラリー(集会)に行きました。会場に入りきれない学生が溢れる熱狂ぶりでしたが、印象としては、話もそんなにうまくないし、もそもそしてて、なんだかなあ、だったのです。それがこの半年でいつのまにか輝くオーラを身につけてしまいました。20代から政治の世界にあって注目されることなく50年、74歳のアメリカン・アイドルの誕生です。
あの格差論の本家、ピケティにまで「バーニー・サンダースの登場はアメリカの方向を変える」と言わせています。
http://www.theguardian.com/us-news/commentisfree/2016/feb/16/thomas-piketty-bernie-sanders-us-election-2016
さて、大統領選の予備選挙というのは、アメリカ大統領選ウォッチ2 で解説したように、どの候補者に投票するかが決まっているデリゲート(delegate 代理人)を選ぶ形式的な間接選挙です。得票率がどのようにデリゲート数につながるのかは州ごとにちがうルールがあるのですが、ニューハンプシャーの場合はサンダースが15人、ヒラリーが9人獲得しました。アイオワ州ではほぼ互角だったので、これでサンダースがぐっとリード、と見えますが、実はそう簡単にはいかないのです。
現在のデリゲート獲得予想数はクリントンが481人、サンダースが55人です。なぜ、こういうことになるかというと、民主党にはスーパーデリゲートというものが存在するからです。デリゲートはプライマリーやコーカスによって選ばれます。スーパーデリゲートというのは、そうしたプロセスなしに最初から投票権をもっているデリゲートで、民主党の下院議員、要職経験者(元大統領など)、党役員から構成されています。つまり民主党のエスタブリッシュメントです。その多くがヒラリーについているわけです。予備選の投票権をもつ民主党デリゲートの総数は5083人ですが、そのうち747人がスーパーデリゲートです。プライマリーやコーカスで選ばれたデリゲートは、それぞれ投票する候補が予め決められていますが、スーパーデリゲートは誰に投票するのも自由です。
747人のうち、現在のところヒラリー支持を表明しているのが449人、サンダースが19人。残りは未表明ですが、スーパーデリゲート獲得は民主党内に強力な地盤をもつヒラリーが圧倒的に有利と見られています。
実は、このスーパーデリゲートという制度は、最近急に注目を集めています。1982年から続いていながら、これまでさほど注目されてこなかったのは、プライマリーやコーカスの結果とスーパーデリゲートの配分にここまでの落差がなかったからです。サンダースに勝ち目はないといわれていた理由の一つに、スーパーデリゲートはヒラリーが総取りという前提がありました。それでも去年の時点では、どう転んでもサンダースがヒラリーに勝てるはずかない、というのがサンダース支持者も含めた大方の見方だったので、スーパーデリゲートについてもさほどの批判が集まらなかったのです。
しかしアイオワとニューハンプシャーでのサンダースの予想以上の健闘ぶりから、もしかしてサンダースいけるかも、ということになって事情が変わりました。スーパーデリゲート制度が「民主的でない」と、批判の槍玉にあがることになったのです。
もともとはさりげなくエスタブリッシュメントの意向を後押しという目的で作られたスーパーデリゲート制度ですが、こんな風にネガティブな注目を集めては、さりげなく後押しなんてわけにはいきません。もしサンダースが投票によるデリゲート数で勝って、スーパーデリゲートによって負けるということになると、民主党は民意を反映していないという批判にさらされることは避けられない。そうすれば11月の総選挙にだっていい影響があるわけはない。スーパーデリゲートだって心穏やかではないでしょう。
まだ支持未表明のスーパーデリゲートはもとより、支持を表明していても、党大会での投票時点まで変更は可能です。実は8年前の予備選でもヒラリーが優勢だったスーパーデリゲートの獲得数は、オバマが一般の支持を増やすに従って逆転しています。スーパーデリゲートも政治家ですから、わが身がかわいい。かなりの数のスーパーデリゲートは、これからサンダースがどこまで伸びるか様子見状態に違いありません。ここにきて、ヒラリー有利にはちがいないけれど、流れによっては必ずしもヒラリー総取りという結果にはならないかも、といわれるようになりました。でも、そうなると、いったいスーパーデリゲートって何のためにあるんだよ、ってことになります。どっちに転んでも民主党にとって頭痛の種になりそうです。

 

一方の共和党ですが、ニューハンプシャーはトランプの勝利で35.5%、2位がこれまでノーマークだったケーシックで15.8%、その後はクルーズ11.7%、ブッシュ11%、ルビオ10.6%と、ほぼ同列。アイオワでトランプに肉薄したルビオは討論会の失敗が響いて転落。これによって、共和党エスタブリッシュメントの支持はブッシュ、ルビオにケーシックという伏兵も加わって、ますます一本化から遠ざかることになりました。つまり、ますますトランプやクルーズに有利になるということです。共和党エスタブリッシュメントにとっては、ますます不都合な方向に向かっているわけです。

ニューハンプシャーのプライマリーの結果にはニューハンプシャー州の予備選挙の制度が大きく影響しています。プライマリーには、州によって、事前に登録した党員だけが、その党のプライマリーに参加できるクローズ方式と、誰でも投票できるオープン方式があります。ニューハンプシャー州のプライマリーというのは、投票所でその場で登録可能な実質的なオープンプライマリーです。アメリカ人の42%がインディペンデント(independent、無党派)ですが、ニューハンプシャーではインディペンデントはどちらの党でも好きな方のプライマリーに投票できます。(両方には投票できません)。つまり、インディペンデントの傾向がより大きく反映されるのです。

プライマリー前のニューハンプシャーの街頭インタビューでは「誰に投票しますか?」という質問に「トランプかサンダースで迷ってる」と答えている人がいました。つまり民主党のプラマリーに参加するか、共和党のプライマリーに参加するか迷っているということです。
トランプかサンダースってそんな馬鹿な、と思うかもしれませんが、実はこれが今回の大統領選の空気です。エスタブリッシュメントに愛想をつかした人々が極左と極右に走っているわけではなかったのです。右だ左だなんてことが、きっともうオワコンなのです。政治家がタブーだと思ってたことが実は全然たいしたことがなかったというのが、次々と露呈してしまっているのが、今回の大統領選です。だから、ヒラリーの方が本選挙で共和党に勝てる、という予想もあやしくなっているわけです。

明日はネバダ州で民主党のコーカス。サウスカロライナ州で共和党のプライマリー。23日にネバダ州で共和党のコーカス、27日にサウスカロライナ州で民主党のプライマリーです。
サウスカロライナ州の世論調査では黒人層に強いヒラリーの勝ちが予想されていますが、ネバダ州はヒラリーとサンダースがほぼ拮抗しています。ネバダでサンダースが勝つかヒラリーが勝つかが要です。共和党の世論調査はネバダもサウスカロライナもトランプ、クルーズ、ルビオの順になっています。でも直前になってローマ教皇から「キリスト教徒にあらず」と批判されてしまったトランプのダメージは少なくないはずです。フランシスコ教皇はラディカルな教皇としてカソリック以外のアメリカ人にも抜群の人気を誇っています。特にカトリックが多いラテン系からの支持には壊滅的な影響があるはず。そうなるとラテン系に強いルビオはここで一気に挽回できるか。共和党は共和党で目が離せません。

アメリカ大統領選ウォッチ3

アメリカ大統領選ウォッチ3
ヒラリーは女性票を獲得できるか

ニューハンプシャーのプライマリーを直前に控えたこの週末の話題は、討論会で大ミソをつけたマルコ・ルビオとヒラリーのサポーターであるフェミニズムの重鎮たちの失言騒動です。これで、予備選挙はますます先が読めなくなりました。
若年層の圧倒的な支持を得ているサンダースはアイオワ予備選で30歳未満の84%という、かつてのオバマを超える強さを見せました。若年層ほどエスタブリッシュメントに対する不信感が強いということでです。
ヒラリーは「初の女性大統領」というのが大きなセールスポイントではありますが、これはリベラル候補であるヒラリーにとって必ずしも売りにつながりません。アメリカというのはマッチョ文化がしみついた国ですから、保守層にとっては、女性であることがネガティブになることは多いに有り得ます。が、民主党やインディペンデントのリベラルな女性は「女性だから」という理由では投票しないのです。それがリベラルというものだからです。ニューハンプシャー民主党予備選挙に関する調査では、45歳未満の女性の64%がサンダース支持、45歳以上ではヒラリーがややリード、圧倒的にヒラリーを支持している世代は65歳以上となっています。中高年以外はサンダース支持が圧倒的なのです。
つまり、リベラル候補であるヒラリーは女性であることの不利益はこうむっても、それによって利益は受けられないということです。こんなことは誰でもわかっていることだと思っていました。ところが、アメリカン・フェミニズムの大御所は理解していなかったのです。
ヒラリーのニューハンプシャーのラリー(集会)に応援演説に来たオルブライト(アメリカ初の女性元国務長官、78歳)が「ここまで私たちは努力して梯子を上ってきた。若い人たちはもう登りきったと思ってるかもしれないけど、まだまだやらなきゃならないことがある。革新、革新っていうけれど、女性大統領ほどの革新があるか。女どうしが助け合わなくてどうする!」と檄を飛ばしました。

こういう説教口調が若い世代にアピールするとは思えませんが、これだけならまだよかった。ヒラリー陣営にとって不運だったのは、時を同じくしてフェミニズムの大御所グロリア・スタイネム (81歳)がテレビのトーク番組でトンデモ発言をしたことです。なぜヒラリーは若い女性たちに支持されないのか、と執拗に尋ねられたときの答えがこれ。
「女性は年を重ねるほどにラディカルになるの、男性は年齢とともに保守的になるのよ、得るものがあるから。女性は得るものがないから、年とともにラディカルになる。若い女の子は、『男の子はどこにいるんだろう』『あ、バーニーのところにいた』ってことになるのよ」

インタビュー全体をみれば、うっかり言っちゃった感がいっぱいなのはわかります。インタビュアー(男)は「おおっ、それってぼくがいったら、たたかれるちゃうよね!?」と反応しているように、アメリカの政治家やタレントなら口が裂けても言わないようなことです。まるでどこぞの国の大臣のような失言。結果は大炎上。後から発言撤回とお詫びをしていましたが、こういうものはもう言ったが最後です。
大学生なんて高校生に毛の生えたようなものですから、ただでさえ、ピアプレッシャーに弱い。30歳未満の84%という数字はそういう意味でちょっと心配でもあります。そこまでサンダース支持が広がるとヒラリー支持を貫くには逆に根性がいります。84%という数字には若い世代特有のピアプレッシャーの影響がかなりある、と私は思います。が、そのモチベーションを男としたところがスタイネムのオールドスクールぶりです。そういう例だってきっとあると思いますが、「それを言ってはおしまい」なのです。本人たちはピアプレッシャーに影響されているなんて思ってもいないし、思いたくもないからです。
ピアプレッシャーとまでは言わないまでも、逆に中年以上のサンダース支持者には子供に影響された、という人が多くいます。私もサンダースの存在を知ったのは娘を通じてでした。今時の親は子供の言うことを聞きます。が、その逆はないのは、今も昔も同じです。
今、40代、50代のリベラルはサンダースかヒラリーか、で揺れています。正直なところ、「共和党のとんでも候補にさえならなければ、どっちでもいい」という人が多いのではと思います。ヒラリーの1番のセールスポイントは女であることなんかじゃなくて、共和党候補に負ける可能性が低そうなことなのです。それを追求するには女のおじさん路線を突き進まざるを得ない。しかし、それでは若い世代にはアピールできない。
そして、フェミニズムのエスタブリッシュメントには、私たちが血のにじむ思いで勝ち取ってきたものを若い子たちは当然のように思っていて、一緒に戦おうとしない、という憤りがあります。しかし、そんなことは若い世代にはまったく納得できない。男も女も得るものがなくなっちゃってるんですから、男に頼ることも、男と戦うことも意味がないのです。今、リベラルな女性たちは、みんなが引き裂かれて揺れています。
さて、一方の共和党ですが、アイオワ・コーカスで大躍進をとげたマルコ・ルビオが討論会で大失敗。「政治家としての経験が大統領候補としては足りないのではないか」という質問に対して「オバマだって経験が浅いといわれたが、彼はやり方がわかっていなかったわけではない。よくわかっていてアメリカを変えてしまったではないか。ぼくは同じやり方で元の姿のアメリカを取り戻す」と、まあ、ありがちな微妙に論点すりかえ優等生回答みたいなことをしゃべったわけです。そこをついたのがニュージャージー知事のクリス・クリスティです。「アドバイザーに言われた30秒の台詞を言ってるだけじゃないのか」と、執拗につっこまれたのに対して、ルビオは同じような論旨の「オバマ云々」を繰り返してしまったのです。すかさず「ほらまた」とクリスティにつっこまれ、聴衆からはブーイングが出る始末。

たしかに機転のきかない対応ぶりは、まるでハイスクールの討論大会に出た優等生みたいでした。こういう場面では実際の若さに加えて、ベビーフェイスであることも災いします。さらに、マルコ・ルビオは背が低い。いやとりたてて低くはありませんが、他の候補者が揃いも揃ってみんなでかい(190センチ級がそろっています)。
それには理由があって、統計的にアメリカの大統領選というのは背の高い候補が勝つ確率が高いのです。オバマだって、ブッシュだって、クリントンだってでかかった。そういうところがまたマッチョ文化のアメリカです。もちろん身体的特徴を攻撃するのは政治的タブーですから、他の候補に直接それを攻撃されることはありません。が、自称5フィート10インチのマルコ・ルビオは実は5フィート8インチだといううわさがあり、他の候補者が普通のドレスシューズを着用する中、ルビオだけはヒール付きのブーツをはいていることもレポートされています。
背の高さなんて、あまりにもくだらない理由ですが、無視できない歴史的統計があるのです。そして、マッチョ文化の主な担い手である共和党では、それはより強く作用すると思われます。
共和党エスタブリッシュメントは、唯一の希望の星をつぶしにかかったクリスティに怒っているともいわれますが、かつて本命だったはずのジェブ・ブッシュをはじめ、支持率1桁の末端候補が、これで「まだ行けるかも」とはりきったのは確かです。ますますニューハンプシャーの結果もよめなくなりました。
民主党も共和党もますます大混戦です。

アメリカ大統領選ウォッチ2

アメリカ大統領選ウォッチ2
コーカスってなんだ?

予備選初戦にあたるアイオワ州のコーカス(caucus/党集会)は、共和党が予想外のテッド・クルーズ勝利、民主党はヒラリーとサンダースがほぼ引き分けとなりました。でも、このコーカスの結果で一番注目すべきなのは共和党でトランプに肉薄して3位につけたマルコ・ルビオ。テッド・クルーズもとんでもぶりではトランプと似たりよったり、胡散臭さではトランプを凌駕していますが、マルコ・ルビオは早くから有力候補として注目されていながら伸び悩んでいた共和党若手。ジェブ・ブッシュがもう救いようもなく沈んだ今となっては、共和党エスタブリッシュメントはこぞってルビオ支持にまわりそうだし、やっぱりね、という結果になりそうな共和党候補。

ルビオが勝つと対する民主党はヒラリーとサンダースのどっちが勝っても苦戦しそう。ヒラリー対トランプまたはクルーズなら、まずヒラリー楽勝。ルビオ対ヒラリーだとヒラリー苦戦の可能性あり。トランプまたはクルーズ対サンダースだと、そこにブルームバーグも加わって三つ巴の大乱戦。ルビオ対サンダースだとルビオの勝ち、というのが大方の予想ではないかと思います。多くの州の予備選が集中する3月のスーパーチューズデーのあたりで出馬するかどうかを決めるらしいブルームバーグですが、ヒラリーかルビオのどちらが勝っても出ないと思います。残念ながら、私の周囲で圧倒的に支持の高いサンダースが勝てる見込みは現実的に考えて薄そう。

それにしても、なんでアメリカの人口の1%にも満たないアイオワ州のコーカス(党集会)がこんなに注目されるのかと不思議に思いませんか。それ以前にだいたいコーカスってなんだよ、と思うのはアメリカ人も一緒で、ニュースでも「コーカス」とは何かという解説を最近よく見かけます。ニューヨークやカリフォルニアにコーカスなんてないからです。

州の独立自治を重んじるアメリカでは、各党の大統領候補を選ぶ予備選挙の方法も各州に任せられています。コーカスというのは党集会と訳されるように、投票者全員が地域の学校だの教会だのに決まった時間に集まって行われるもので、昔は全州がこの方式でした。時代に合わせてプライマリー(primary)とよばれる普通の選挙方式にする州が増え、現在もコーカスをやってる州は少数派(10州)です。その一つがアイオワなわけです。

で、集まって何をするかというと、これは民主党と共和党で違います。共和党のコーカスは会場で手を上げて、どの候補を支持するかを表明します。通常、選挙といえば匿名が常識と思い勝ちですが、コーカスはそれを公にすることがプライマリーとの大きな違いです。

その点、民主党のコーカスはもっとすごい。たとえば、今年ならヒラリー支持者はこっちのコーナー、サンダース支持者はこっちのコーナー、と会場の中で別れます。そして、もし3人以上の候補がいる場合は、15%以上集まらなかった候補は失格になるので、その支持者は改めて15%以上集めている候補者を選ばなければなりません。そこで30分かけて、それぞれの支持グループが「こっちにおいで」と説得するんだそうです。

この方式って夫婦やご近所で別の候補を支持したら、険悪なことになるんじゃないか、あるいは、そのために妥協しちゃう人がいるんじゃないか、と心配になりますが、ともかくこれが伝統的な方式であるということで許されるらしい。こうして何世紀も前のシステムにこだわっているところが、アメリカらしい頑固さでもあります。

さて、こうやってコーカスやプライマリーで選んでいるのは、実は大統領候補ではありません。大統領候補に投票するデリゲート(delegate 選挙人)を選んでいます。そのデリゲートは誰に投票するかが予め決まっているので形式だけの間接選挙ですが、選挙結果には得票率とともにデリゲートの人数も表示されます。コーカスやプライマリーの結果からデリゲートの人数を決定する方法も、州と党によって異なり、もうこのへんは誰も理解しようともしません。複雑すぎて。

で、アイオワ州のコーカスがなぜ一番最初になったかというと、これは偶然の産物。アイオワ州というのは特に複雑なシステムでデリゲートを選んでいて、コーカスで選ぶのは実は地域の代表、その地域の代表が郡の代表を選ぶというふうに、州党大会でデリゲートを選ぶまで4段階の手順を踏むことになっています。もともとは適当にその日程を決めていたのですが、1968年に集会は30日以上前に告知をしてからというルールができました。そこで、それを各ステップに適応して、最終的な州党大会のある日から逆算することになりました。が、その年、たまたま州党大会を予定していた週末に開催都市のデモインでホテルの空き部屋がなかった。そこで、州党大会を早めた結果、将棋倒しでコーカスが例年よりもずっと早くなってしまったのです。

実はその時点ではアイオワ州の人たちも、それがどういうことなのか気づいていなかった。注目されたのは1976年の大統領選挙でジミー・カーターが最初のコーカスということで力を入れてから。注目をあびるということがわかったところで、アイオワ州は「どこよりも早くコーカスをやる」という州法を作ってしまいました。そこにすかさず「どこよりも早くプライマリーをやる」という州法を作ったのがニューハンプシャー州です。こうして、予備選はアイオワ、ニューハンプシャーからというのが言ったもの勝ちで決まってしまったのです。まあ、これもアメリカらしいっていえばらしいですが。
というわけで、来週はニューハンプシャー州のプライマリーです。