…So goes the nation

 大方の予想通り、中間選挙は民主党大敗と。民主党の相変わらずのマーケティング戦略の下手さと、共和党の衆愚コントロールスキルがそのまんま反映された選挙でした。
 ことに大成功したのは共和党のティーパーティのブランディング。ティーパーティは日本でも報道されていますが、「小さな政府、経費縮小、政府介入最小化」を主張する保守派の市民運動です。ティーパーティというのはアメリカ独立時のボストン・ティーパーティからとったもので、既にこのネーミングが秀逸。
 実はこのティーパーティ、アイドルはサラ・ペイリンで、「地球温暖化なんてでっちあげだ。聖書には『地球を活用せよ』と書いてある」とか言ってのけるくらいなトンデモ保守なんですが、ティーパーティというネーミングのおかげで、なんだか市民の権利を守る草の根運動みたいなイメージ作りに成功しました。さすがにニューヨークのメトロポリタンエリアでティーパーティに賛同しているなんて言ったら、十中八九ドン引きされますが、ニューヨーク州だってゲイ批判はするわ、女性ジャーナリストをベイビーよばわりするわのパラディーノがティーパーティに推されて共和党公認の知事候補になったくらいですから(当然負けた)、アメリカの真ん中のあたりではティーパーティはさぞやホットなものだったのだろうと思われます。
 2年前の大統領選では、オバマが勝てばアメリカは大きく方向を変えて明るい方向に進む(と思いたい)という希望がありましたが、結局景気の悪さは相変わらずで、なんだかわかんないけど株価だけが回復してるのに失業率はますます悪化しています。この選挙どっちが勝っても状況はたいして好転しないだろうという閉塞感がいっぱい。そのあたり自民党政権から民主党政権に代わっても先に光が見えてこない日本と似た状態にあります。
 そこに現われたティーパーティというのはまったく都合が良かった。ブッシュからオバマに代わっても生活の不安は増したばかりじゃないか、という不満をうまくとりこんだのです。
 そもそも共和党は金持ちの保守政党、民主党はリベラルな労働者の政党というのが伝統的なイメージで、草の根運動は民主党のおはこだったはずなんです。が、最近の共和党の得意技は、民主党を庶民の気持ちがわからないエリートとして攻撃する戦略です。
 そのあたりは、ブッシュがまさかの再選を果たした2004年の対ケリー大統領選を描いた2006年のドキュメンタリー映画「…So goes the nation」を観るとよくわかります。選挙前はブッシュじゃなければ誰でも勝てると思われた大統領選に、民主党ときたらケリーみたいにブッシュじゃない以外に何の魅力もない候補を選んじゃった上に、展開するキャンペーンはなんだかポイントがわからない最悪のコミュニケーション。対する共和党はネガティブキャンペーン大展開で、ケリーがウィンドサーフィンをしてるところを映したりして東部のお金持ちエリートイメージを植えつけた。ケリーがフランス語に堪能だってことまでマイナスイメージ(アメリカン・カウボーイはフランスが嫌い、教養主義が大嫌い)。その一方で、ブッシュがテキサスのファームでチェーンソーをふるってるところを流す。「僕はふだんは、このファームでこんな風に過ごしているんだよ」って見え透いた嘘をしゃあしゃあと。実はブッシュだって東部出身エール卒(実力で入ったと思う人は誰もいないが)で実家はケリーよりずっとお金持ちで(なにしろパパは大統領なんだから)、テキサスのファームは大統領選挙に出る直前に購入したってことも隠しようのない事実ですが、そんなことはおかまいなし。それが見事に功を奏したわけです。
 今回の選挙でも民主党のマーケティングの下手さは相変わらず。例えばオバマ政権になってから実は所得税は下がっているんですが、誰もそれに気付いていない。収入が上がらない、場合によっては失業によって収入がなくなっているのに、ちょっとやそっと税率が下がったって焼け石に水で、黙っていたら誰も気付くわけがありません。で、ぼそっとインタビューの片隅で「誰も気付いてないけど、税率は下がってるんですよ」と言ったりしている。もっと効果的に宣伝しろよっ!
 で、今年末に期限切れとなるブッシュ政権が発効した減税の延長から年収25万ドル以上の層を外すというだけで、それに反対する共和党は「増税」と大騒ぎ。年収25万ドル以上なんてアメリカ人の数パーセントしかいませんが、それにのせられるヤツはいっぱいいるわけです。税率については、日本の税率も含め最近気付いたことがいろいろあるんですが、長くなるので別項で。
 さて、今回の選挙で共和党が下院で逆転過半数を占め、私の一番の関心事である健康保険制度の改善はますます遠くなりました(アメリカの健康保険のひどさは過去のブログにさんざん書いてきたとおりです)。私は特に民主党支持者というわけではありませんが、この一点だけでも共和党を支持することはできません。民主党のナンシー・ペロシに代わって議長となったジョン・ベイナーが今朝のニューヨークタイムズのインタビューに答えているのを読んでのけぞりました。
「I believe that the health care bill that was enacted be the current Congress will kill jobs in America, ruin the best health care system in the world and bankrupt our country.」
 乳児の死亡率が先進国中一番高くて、4人家族の保険の掛け金が収入に関わらず月々1500ドルを超え、保険が買えない無保険者が国民の15%を軽く超え、保険があってすら医療費で破産する人や、医療費が高いから症状を我慢して悪化させる人(私だ)が普通にゴロゴロいるアメリカのヘルスケアシステムのどこが世界一なんだよっ!
 こいつは本当にアメリカの医療システムが世界一だと信じているほどバカなのだろうか。それともあくまでも「アメリカ・イズ・ナンバー1」を主張して無知な国民をあざむく悪者なんだろうか。どっちにしてもろくなことがないにちがいなく、暗澹とした気分になります。

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投稿者: motokokuroda

アメリカ生活も四半世紀を超えました。お料理から政治まで、興味のおもむくままに。

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