キャデラックランチ

2010年6月20日
 Cadillac Ranch(http://caddyranch.com/index.html)というカントリーウエスタン・クラブに行ってきました。東海岸最大のカントリーウエスタン・レストラン&ダンスクラブだそうです。
 なんでまたカントリーウエスタンかというのは長い話になりまして、気の短い方は次の段落とばしてください。
 コミュニティセンターのエクササイズのクラスにLine Danceというのがありまして、私はてっきりラインダンスというのはロケッツとか宝塚みたいな並んで踊るやつだと思い、昔やってたジャズダンスみたいなのができるかもと行ってみたら、講師はカウボーイブーツのビール腹のおっさんだったのでした。日本でラインダンスといえばカンカン踊りみたいなものですが、アメリカでラインダンスといえばまずカントリーウエスタンのダンスのことだとそこで初めて知りました。人生の半分近くをアメリカで暮らしてもなお、この手の勘違いはよくあります。でもまあ、それはそれでおもしろいかも、と思って1クール(5回コース)はとったのですが、エクササイズとしては物足りないのでそれきりになっていました。ところが、そのクラスにいた人と今度は別のクラス(ラテンダンス・エクササイズ)でばったりと再開し、カントリーウエスタンのダンスクラブにみんなで行くから一緒に行こうと誘われたのでした。アメリカの常として、こういうソーシャルプランはカップル参加が基本ですから、気乗りがしなさそうなチャールズを有無をいわさず連れていきました。
 で、このキャデラック・ランチ、大変おもしろい体験でした。仕方なくついてきたはずのチャールズもおおいに楽しんでいました。なにが面白いかというと、これがまるで東海岸に出現したテキサスの異空間なのです。車で1時間ちょっとのところなのですが、まるで飛行機で旅行でもしてきたような異文化体験。
 場所はコネチカット州の真ん中。つまりニューイングランドのど真ん中にあって、ハイウェイ沿いのなあんにもない所に唐突に出現するでっかいbarn(納屋)のような建物。まだ7時半だというのにこれも巨大な(でも舗装もなんにもしてない)駐車場には車がいっぱい。カバーチャージは1人あたり5ドル(安い)。中もドドーンと広くてロデオマシンやビリヤード台の間を抜けていくと、これまた巨大なダンスフロアがあって、すでにかなりの人数が踊っていました。ラインダンスがディスコダンスと違うのは曲によって振り付けが明確に決まっている点です。全員がユニゾンで同じ振りを踊ってるので、なんだか不思議な雰囲気です。振りそのものは難しくはないのですが、方向がくるくる変わるのでステップを覚えないと見よう見まねだけで踊るのは難しい。が、覚えてしまえば80歳90歳でも全然平気です。実際に真っ赤なブーツも鮮やかな白髪のおばあさんや70代のカップルがたくさんいました。
 レッスンタイムもあって、ステップを一つ一つ教えてくれるので、とりあえず初心者でも習った踊りは踊れます。でも次々にかかる曲はすべて違う振りがついているので、フロアで踊っている常連さんたちは相当長く通っているのでしょう。
 最初は平均年齢60歳以上だったフロアも、だんだん夜が更けるにつれて若い子が多くなってきて20代はもとよりティーンエイジャーみたいな子の姿まで見えるようになってきました。で、みんな結構ノリノリでラインダンスを踊っている。このテンガロンハットのトラボルタみたいなお兄ちゃんたちはいったい昼間はどこにひそんでいるのでしょう。テキサスならともかく、このあたりではまず見かけないタイプなのに。
 そして、この夜なによりもたまげたのは、宴もたけなわになる9時ごろ、突然アナウンスがあって「oh say, can you see…」と国歌が高らかに鳴り響いたことです。国歌がかかります、というアナウンスがあると客全員が一斉に立ち上がり(これは野球場でもどこでもそうだけど)テンガロンハットを胸にあて国歌斉唱するのです。こういう時は一人座ってるわけにもいかないから一緒に立ってはいるわけですが、本当に居心地が悪い。私はこの手の強制的なパトリオティズムというのが大嫌いです。
 まあ、日本のバーやダンスクラブで、突然「君が代」がかかるなんてことは、まずありえませんが、ここは学校で国家に忠誠を誓わせるのが日課になってる国ですから、あってもおかしくはありません。こういうのが苦手なリベラル派のチャールズもたまげていましたが、他の客はごく普通にやっていたのをみるとカントリーの本場では珍しくないのかも。
 そしてもう1つ、新聞か雑誌で読んだことはあるけど、この夜初めて見たのが「ショット」。ウェイトレスがトレイにのせた色とりどりの試験管みたいなのを運んできて「ショットはいかが」と売ってまわるのです。何がはいってるんだかわけがわからないけど、とにかくハードリカーのミックス(たぶん安物のウォッカとかラム)で、これを1ショットで飲むという若者のドリンクです。こういう30過ぎたらまず飲まないような怪しげなドリンクを売ってるくらい若い客も多いらしい。
 さて、ダンスフロアのセンターは1人で踊るダンスのユニゾンになっていますが、その周囲を回りながら踊るのはカップルです。つまり1つの曲にシングル用のダンスとカップル用のダンスと2つの振りがついています。カップルで踊る方が実は振りは単純ですが、上級者になると間にくるくる回ったりしています。その中で、際立って巧みにクルクル回っているカップル、というか女の子をグルグルまわしている限りなくおじいさんに近いおじさんが1人。
 最初に気付いたのはチャールズです。
「あのじいさん、次から次へと違う若い女の子と踊ってる。」
たしかに、このおじいさんの相手は20歳前後と思われるスタイル抜群の女の子ばっかり。しかも1曲ごとに相手が違う。どの子もラインダンスにかぎらずダンスがかなりうまいのは一目でわかります。うまくなるほど相手もうまくないとつまらないわけで、ダンスのパートナーとしては若いイケメンより上手に踊らせてくれるじいさん、となるのでしょう。ダンスのできる男子は慢性的に不足してますから、もてたい男はパートナーが必要なダンスをやるのが一番です。
 チャールズにもぜひダンスを練習してうまくなってほしいので
「ほらね、ダンスができるとあんなおじいさんでも若い女の子にもてるんだよ」
と言ってみたのですが、ダンスに行くとなれば私がもれなくついてくるので、あんまりモチベーションにはならないな。
広告

投稿者: motokokuroda

アメリカ生活も四半世紀を超えました。お料理から政治まで、興味のおもむくままに。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中