スペリング・ビー

1月から3月初旬まではニューヨーク観光客が一番少ない時期。平日の午前中に美術館の常設展に行くと広い展示室で名画独り占めの贅沢が味わえます。ブロードウエイもこの時期はさまざまな割引キャンペーンをやっていまして、この4割引クーポンを使って娘がかねがね観たいと言っていたミュージカルのチケットを購入しました。その第一弾が「The 25th Annual Putnam County Spelling Bee(25周年プツナム郡スペリング・コンテスト)」。3年前にオフから上がってきたときから気になっていたものだったので、このチャンスにということで。
一言でいえば、コーラスラインのコメディバージョン。スペクタクル系のミュージカルではなく、小劇場系の観客と近い芝居です。スペリング・ビーというのは歴史ある子供のスペリングコンテストで、全国大会決勝ともなれば大人だって聞いたことのない単語ばかりが出題されます。当然、スペリング・ビーに出場するタイプの子供のステレオタイプはnerd(ガリ勉の変なヤツ)ということになっていますが、最近はドキュメンタリー、フィクションともにスペリング・ビーの子供たちをテーマにした映画ができたりして脚光を浴びています。ナードといえばクールの対極ですが、本当は捨てたもんじゃないんだぞ、というわけです。4,5年前にドキュメンタリー映画で観たスペリングビー全国大会ファイナリストの勉強ぶりはすごかった。お姉ちゃんもチャンピオンだったという中学生の男の子には英語はもとより、ラテン語、フランス語、ギリシャ語の家庭教師がついていました。語源を勉強するためです。どれだけ辞書を愛読しようと決勝ともなれば知らない単語が必ず出てくるので、その語源からスペルを推測する技術は必須なのだそうです。親の入れ込みようもすごいですが、本人がお勉強大好きでなければ絶対にできません。私には想像もできないような子供が世の中にはいるんです。
で、ミュージカルのスペリング・ビーですが、出場する子供たち(演じているのは大人の役者)のそれぞれのナードぶりと、その背景にある家庭の事情が展開されるというのがストーリーです。ナッツアレルギーで喘息持ちの肥満児、ゲイカップルの2人のお父さんに育てられた娘、何でも1番という期待に応えるのに疲れきった韓国人の優等生、全員が優秀かつアグレッシブなユダヤ人家庭で親兄弟にドンくさいヤツと言われ続けている男の子、という具合にナードのステレオタイプ見本市みたいなものです。スペリングコンテストに出題される単語をめぐって臨機応変に飛び出すジョークも結構面白くできています。
こういう小劇場タイプの芝居というのは私の好みなので、それなりに楽しめました。ただこれを100ドルの定価を出して満足かといわれるとちょっと。4割引きの60ドルなら納得。そもそもオフとしてチマチマと長くやっていくべき演し物です。それにしても、ブロードウエイの役者の幅広さというのは感心します。年齢体型、人種、あらゆるバリエーションで歌も踊りも演技も、まず完璧な役者が幾重にも揃っている。人を感動させるだけの芸があるかどうかは別として、技術的に今一つなんていうのは在り得ない。職人としての役者が揃っていて、そういう職人さんたちの生活が成り立つようになっているということなんだろうけど。

糸が

スペアのお琴の糸が去年切れて、そのまま放ってあったのを重い腰をあげて締めにかかりました。スペアとはいえ、あんまり長く弾かないでおくと、お琴がふてくされて音が悪くなるので。楽器がふてくされると初めて聞いたときは、ずいぶんと非科学的な感じがしましたが、実際にそうなので何かそれなりの根拠があるのでしょう。
お琴の糸というのは、すごく強く張ってあるもので、しかもギターやバイオリン、三味線とちがって巻き上げるねじのようなものはついていないので糸を締めるのはかなりの力とコツがいります。基本的には琴屋さんの仕事で、プロの琴屋さんたちはその技術で締めるわけですが、ここには琴屋は存在しないので、糸が切れたら自分で締めるしかない。で、力と技術のない人は糸締機を使います。小型の万力みたいなものですが、これをうまく使いこなすのも実は結構難しい。私の持っている万力は祖母から受けついだもので、いつ購入したのかはしりませんが、使用法の説明がえらく大時代です。
「本機は時代の要求に依り、何誰にも容易く琴絃が緊張められる様に、機械化せしめ創業発売致しました堅牢優美な完全無欠なるコウカン(漢字が出せない)応用で在ますから、十一、二才のお子供衆にも二本の指先にて軽く完全に締められるその道の必需品で在ります」
で、お子供衆でも指先にて軽く完全に締められるはずの堅牢優美な完全無欠の糸締機で、見事に大失敗。締めすぎて糸を切ってしまいました。しかも弾いてて切れたのと違って下の方で切れているので糸は完全に真っ二つ。もう短くて使い物になりません。糸締機を使うのは数年ぶりなので使い方を思い出すまでに結構時間がかかり、全然締まらない糸と小1時間悪戦苦闘した結果がこれ。新しい糸が手に入るまでスペアのお琴はふてくされることになります。

シングル

シングルの寒さです。朝の10時くらいで華氏6度、摂氏でいうとマイナス12度くらいでした。30分以上外にいると凍傷になるから危険だそうです。犬も外に出すな、と。冬はだいたいこんなものですが、今までが暖冬だったのでこたえます。
 
写真は、先週のある日の晩御飯です。こうやって記録に残しているのは、一応それなりに形になってるご飯を作る余裕があった時ですが、これはものすごく手も時間もかからないお奨め品です。
鶏の胸肉をひらたく薄くのばして、パン粉をつけてオーブンで焼くだけ。パン粉をあらかじめオリーブオイルでキツネ色になるまで炒めておいて、鶏の方にはマスタードに塩だのガーリックパウダーだのパプリカだの適当なものを加えてヨーグルトか牛乳でのばして糊状にしたものをつけて炒めたパン粉をまぶす。高温(230度くらい)のオーブンで10分くらい焼けばできあがり。チキンカツより低カロリーでしかも、簡単。付け合せはパン粉をいためたフライパンでつくるインゲンのガーリックソテー。あとは切っただけの赤ピーマン(たまたま冷蔵庫にあった)とジャガイモを電子レンジで加熱してから鶏と一緒にオーブンに放り込んでおいたもの。所要時間20分、料理の後の洗い物はフライパン一つ。

魔笛

METの「魔笛」をテレビで観ました。この暮れにMETが子ども向けに製作した特別バージョンで、休憩なしの1時間50分くらいに短縮して、歌もすべて英語バージョンにアレンジされています。衣装、美術、演出はライオンキングのジュリー・テーモア。本興行(短縮版じゃないもの)の初演時には早々に完売で評判のよかったものです。
すごく面白かった。私はオペラファンではなくて、本物の舞台を観たのは数えるほどですから、他と比べてどうということはいえませんが、DVDに録画しておいてあとから観ればいいやと思っていたのに、つい最後まで離れられずに観てしまいました。魔笛そのものが飽きるところのない初心者向けによくできたオペラだということもありますが、ジュリー・テーモアの作り物がすごく楽しかった。実はわたしはライオンキングも観てないのですが、観たくなりました。
全編通じて、とくに良かったのはパパゲーノ。本来が儲け役だけど、パパゲーノ役の歌手の役者としての魅力が、この舞台の面白さをかなり支えていたと思います。が、パパゲーナが・・・、老けてる。婆さんの着ぐるみをパッととると中から可愛い18歳の娘が出てくるはずなのに、中からおばさんが出てきたんじゃ、パパゲーノ2度がっかりだろう。この役は、何はなくとも若手を配役すべきだと思うのだけど。とくにテレビで観れば、若造りしても、老け顔が一目瞭然。テレビでなくともオバサン体型はかくしようがない。腕むきだしの衣装がことにいけない。ジュリー・テーモア、作り物は優れているけれど、衣装をもうちょっとなんとかした方が。
衣装といえば、お姫様タミーナの衣装も全然似合ってない。アジア人のタミーナで、とりわけ肥満している歌手ではないけど、衣装のデザインがバランシン好みの極細女向きの衣装で、必要以上に重量級に見えます。配役は公演日ごとに変わるわけだから、人に合わせてデザインするわけにもいかないだろうけど、バレリーナじゃないんだから、バランシン好みの体型の人が着る可能性は極めて低いと思う。
衣装どうこう以前に体型に問題があったのは王子様タミーノで、「まあ、なんてハンサムな王子様」とか歌ってるわきで倒れている王子様の腹があからさまに盛り上がっているのは、ちょっと。こういうところでひいてしまうので、私は今ひとつオペラが楽しめないのかも。
でも、こういう諸問題はあるにしても、この魔笛は相当に面白かった。来シーズンもこういう企画があったら観に行こうと思いました。METの新ディレクターの新規顧客開拓キャンペーンはなかなか効果をあげてるようです。
 

ティーンズ

あったかすぎるのも滅びゆく地球を実感するようで気味悪いですが、やっぱり寒いのはいや。寒いです、すごく。まあ、これが普通のニューヨークなんですが。最高気温が華氏10度台。ほんとにしつこいけど華氏32度が氷点ですからね。摂氏でいえばマイナス5,6度ってことで。しかも北風がすごい。雪こそ降っていませんが、それだけに余計寒い。これからしばらくこの調子らしいです。こういう日にニュースでは「今日はティーンズの寒さ」といいます。10度台ってことで、その上にはシングルズもあるわけですが、これはさすがにめったにない。さすがにアラスカじゃないので、さらに寒いビロウ・ゼロ(零下)となると、私もこれまで1回しか経験したことがありません。とにかくティーンズの日はすごく寒い。ティーンズは、人間も天気も、ろくなもんじゃありません。
で、人間ティーンズの娘は気温が下がってやっとスキー場がオープンしたので大喜び。が、タウン主催のスノーボードツアーは申込者が定員以下でキャンセル。暖かい日が続いたために申し込みが少なかったらしいです。近くのスキー場に連れていけとせがまれましたが、こんな寒い日にとんでもない。車で40分も行けばスキー場がありますが、このあたりはあまり雪が降るエリアではないので、人口雪中心の小さなスキー場です。あまり暖かいと雪が作れないわけですが、こう寒くなると雪は作れてもそれが凍ります。しかも風の強い日は新しい雪が吹き飛ばされてアイスバンにザラメをぶちまけた状態になり、なんといっても寒さが半端じゃない。つまり、私がすすんでスキー場にでかけようという日は実はとても稀。雪が降ったあとでそんなに寒くないけど、雪が溶けるほど暖かくなくて風のない晴れた日。そんなもん1シーズンに1回もあればラッキーです。
というわけで、早くも寒さにはうんざりしています。
 
金曜日の夕ご飯です。日本食料品店(25マイルくらいのところにある)に出かけたあと1週間くらいは、このような日本食の献立が可能です。さばの塩焼きと大根おろし、胚芽米(カリフォルニア産田牧米の胚芽米は日本の胚芽米より美味しい)、ほうれん草のごまあえ(アメリカのスーパーで売ってるオーガニック・ベビースピナッチというサラダ用パックは洗わず切らずそのまま茹でればOKなのですごく便利)、大根の皮の一夜漬け(大根は貴重品ですから)、いくらのしょうゆ漬け。
夕ご飯の写真を撮って、ブログに載せるといったら娘に変人扱いされ、「Don’t you have a friend?」だと。ほっといてくれ。

チアリーダー

今日のニューヨークタイムズに、学校が男子のスポーツチームばかりサポートするのは不平等であるというので、これまで男子のフットボールとバスケットの応援だけに出動していたチアリーダーを、女子バスケットボールの試合にも送る公立のハイスクールが増えてきているという記事がありました。もちろん、平等になってめでたしめでたしなんてことにはならないわけで、チアリーダーたちは行けって言われたから来てるのに女子選手たちから「あんたたち、何しにきたの」とか言われるし(そりゃき女子選手にとっては目障りであろう)、男子の応援じゃなきゃやりたくないと言ってやめるチアリーダーもいるし(これも当然だ)大変不評だといいます。じゃあ、もとに戻すかというと、誰が見たって不公平には違いないんだから、差別が何よりの罪悪とされているアメリカの公立学校ではそういうわけにもいかないらしい。
そもそもチアリーダーという存在が行き詰っていて、いまどき60年代、70年代のようなクールな存在ではなくなっています。昔の映画では(いまどきの映画でも)学校の人気者の美人女子といえばチアリーダーみたいはステレオタイプがありますが、あれはお話の世界です。今やクールな女の子はチアリーダーなんか見向きもしないというのが現実のようです。娘の学校での話を聞いてもチアリーダーには人気が全然ない。将来の職業に間違っても秘書なんてことを考えもしない女の子たち、どんなスポーツでも男子のするものは必ず女子バージョンも与えられてきた女の子たちに男子のゲームの応援なんてコンセプトが受けないのは当然でしょう。これもフェミニズムの勝利といえばいえるのかも。
娘の学校では、女子の試合にチアリーダーが行くのかどうかきいてみたところ、行かないそうです。でも男子の応援にも限られた大きな試合を除いてほとんど行かないんだそうです。チアリーダーそのもののコンペティションに出場するのが主な活動らしい。
ニューヨークタイムズの記事は「ただでもメンバーが減ってるのに、楽しいことをどんどん取り上げられたら、今にチアリーダーは絶滅してしまう」というチアリーダーのキャプテンの話で終わっていましたが、本当にチアリーディングはもう絶滅の危機に瀕しているのかもしれません。
日本の中学や高校にはまだ男子運動部の女子マネージャーっていうのは存在してるんだろうか、とふと考えてしまいました。存在してるんだろうな、きっと。

あったかすぎ

気味悪いくらいの暖冬です。まあ、昨日今日は結構寒いですが、また週末は50度(華氏)を越えて雨が降るそうで。このあたりのスキー場は気温が高すぎて雪も作れずしまったまま。バーモントでも雪がないそうです。日本でいえば蔵王に雪がないとかニセコに雪がないというのと同じです。あったかいのは楽で結構なんですが、不気味すぎます。
風邪がなかなかすっきり抜けません。首から上がいつもぼうっとしてて、物を食べても味が全然わからない。でも、お腹はすくので食べる。当然ちっとも痩せない。なんだか損した気分です。
 
とか言ってるうちに数日が過ぎ、風邪もやっと抜けてきました。明日からはぐっと冷え込むそうです。昨夜は一応の風邪回復の景気付けに友人母子をよんで食事。子ども向けに久しぶりにカップケーキを作りました。カップケーキは日本人にはあまり馴染みがありませんが、アメリカの子どもたちは何かというとカップケーキです。エレメンタリースクールの頃は誕生日のたびにクラス全員分のカップケーキを持っていくのがお約束でした。通常アメリカで売られているカップケーキは上にゴテっとのっているアイシングが口が曲がるほど甘いのですが、真面目にバターと卵と砂糖だけでバタークリームを作って作成するとなかなか結構なものができます。このバタークリームの飾りつけがまた楽しい。
 
そろそろパスポートが切れるので更新のための写真を娘に手伝わせてデジカメで撮りました。このあと10年もさらされる写真なんだからと、念入りに化粧して娘があきれるほど何枚も撮った上にフォトショップで明るくしてみたりしましたが、写真っていうのは年齢を正直に写すということがよくわかりました。まあ、人に見せるもんじゃなし、サイズさえあってりゃいいか。
 
カメラが手元にあったので、ついでに夕食の写真なんぞも撮ってみました。本日の夕飯はチキンのトマト煮。私はクレソンのサラダ、娘は茹でたグリンピース。最近、サラダはくせのある葉物にオリーブ油と醤油とバルサミコ酢をかけるのが気に入っています。ドレッシングより美味しいです。