フットボール

さて、わたしがユーペンに遠征したのは土曜日。元夫も用事があり、娘の預け先がなかったので一緒に連れていくつもりでいました。が、よほど一緒に来たくなかったのか、自分で預かられ先を調達してきました。金曜日の夜から友達の家に泊まりに行くというのです。それはそれで結構なのですが、なぜ金曜日からかというと、金曜日の夜にイベントがあるから。学校のフットボールのゲームを友達と一緒に観に行くといいます。娘はフットボールどころか、何一つチームスポーツをやってきたことはないし、興味もない。それどころか、わたしも元夫もさらに両祖父さんにいたるまで、スポーツ観戦にまるで興味がないという珍しいほどのスポーツ欠落家系です。もちろんフットボールなんてルールすら知らない。
娘のいうには「みんな行く」のだそうです。興味があろうがなかろうが、この「みんな」が出てきては行かないわけにはいかないうちの娘。どうも、ハイスクールのフットボールの試合というのは、子供たちの間で必須のイベントとなっているらしい。場所こそ学校のコートですが、試合時間も金曜日の夜7時からと、思いっきりエンターテイメント扱いです。1ドルか2ドルかですが、観戦料金もちゃんととります。
で、ユーペンから戻って、娘に「フットボールはどうだった?」ときくと、「すごく面白かった」そうです。が、さらによく聞いてみると、試合が面白かったわけでもなんでもなく「誰も試合なんか見てない」そうで、ハンバーガー屋やらホットドック屋やらキャンディ屋やらが出てて、そこでみんなでだべっているのが楽しいらしい。屋台といっても、おそらく選手の父母が資金作りにやってるのだろうと思われますが、とにかくお祭り騒ぎらしい。いったいどんなものやら、一度見てみたいので「今度はお母さんが連れて行ってあげる」というと「フォローアラウンドしないでね(一緒に付いてくるな)。コートの反対側の方にいてね」とうろたえる娘。「ケイティ(昨日一緒にいった友達)のお母さんに連れて行ってもらうのも、お母さんが行くのも同じじゃない」というと「ケイティのお母さんはドロップオフしただけ(車で子供たちを連れていっただけ)」といいます。「ふうん、でも、お母さんは、あんたたちが何やってるのか見たいから行くんで、フットボールが観たくて行くんじゃないからさあ。近くにいないと意味ないんだよね」というと「絶対に来ないでね。エンバラシング(恥ずかしい)だから絶対に来ないでね」とますますうろたえる娘。
これは使えるかも。片付けないと、フットボールに行くよ。日本語の宿題やらないと、フットボールに行ってやる。
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ユーペン

土曜日にはフィラデルフィアのユーペン(ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア)に行きました。これは師匠と一緒です。ただし、師匠は、別の演奏先のノースキャロライナから飛行機で直接行くので、往きは現地集合。一人で片道150マイル以上(200キロ以上)ドライブしていくのは、結構心細い。距離よりも、問題は道順。フィラデルフィアに行くには、ニュージャージーからペンシルバニアに入るのですが、これはかつての琴ツアー遠征でも道を間違えてえらい目にあった鬼門の方角。マップクエスト(ウエブのフリーマップ)で調べて行ったのですが、ニュージャージーターンパイクからペンシルバニアに入るところで見事に迷いました。この前はニュージャージーに入るつもりで、行きたくもないフィラデルフィア方面に向かってしまったのに、行きたいときにはなぜ行けなくなるのか。さんざん迷ったあげくに、もと来た道に戻ると、捜していたハイウエイの表示発見。なんと表示は反対方向(引き返して来た方向)にしか出ていないのでした。しかも、マップクエストが大嘘。merge(合流)と書いてあったのに見事な十字路で、真っ直ぐ走ってたら絶対にmergeなんかしない道。会場に予定より20分遅れで到着すると、先に着いていた師匠も、空港から乗った乗り合いキャブのドライバーが「道がわかんなくなったから、ここで降りろ」ととんでもないことが言うので、大喧嘩したといってぶち切れていました。道がわかんないってフィラデルフィアの運転手がなぜユーペンくらいわかんないんだあ。
のっけからつまづいたユーペンですが、ミュージアム(ユーペンはマンモス大学で大学内に立派な美術館がある)で行われたコンサートは大盛況で、楽しかったです。ユーペンは入学難易度からいえば、エールほどではないにしろ、かなりハイレベルな大学ですが、大学の規模が大きいということもあるでしょうが、雰囲気はずっとくだけた感じです。いかにもアメリカの大学らしい雰囲気。
帰りは師匠と二人なのでずっと気楽でしたが、二人だから道がよくわかるということはなく、やっぱり迷いました。まずユーペンを出てからハイウエイの入り口を見逃した。これも戻ってきたら、反対方向にだけ表示が出ていることを発見。ハイウエイの道路標示は両方向に出してはならないというポリシーでもあるのか、ペンシルバニア。

エール大学

先週は2つの大学でお琴を弾いてきました。火曜日の夜に行ったのがエール大学。何の催し物だか、どこで弾くのかも(エール大学は広い)よくわかんないまま、迎えの車を出すのでそれに乗ってくるようにという指示がありました。車の送り迎え付きなんて初めてです。さすがアイビーリーグ、お金持ちです。それぞれ自分の車で行くから大丈夫です、と師匠が言ったら、過去に道に迷って演奏時間までにたどり着かなかったパフォーマーがいるので、迎えの車を出すと先方は言い張ったそうです。で、前日に確認の電話があって、6フィートのお琴を積めるように助手席のシートが倒れる車かバンにしてくださいね、とお願いすると、「大丈夫、ちゃんと積める車を手配するから」と請け負ってくれました。なかなか感じがいいです。で、翌日、迎えに来た車を見てたまげました。黒塗りのストレッチ・リモ。マンハッタン方面から来る人たちの車もやっぱりストレッチ・リモだったそうです。座席に麗々しく横たわる琴と一緒に一人ででかいリムジンに乗るのは妙なものです。習慣でだだっぴろい車内でも隅っこのシートでシートベルトを締めないと落ち着かない。
エール大学のあるニューヘブンはうちから1時間程度のところですが、実はダウンタウンに行くのは初めて。エール大学関係のリッチなエリアとそれ以外の貧乏なエリアが混在しているということはきいてはいたのですが、なるほど、車で走っていくと、そういう風景が入れ替わり現れます。ダウンタウンの由緒ありげな古い建物は大抵がエール大学関係のものでどれもいかめしい石造り。これでは初めて来るパフォーマーは迷うわけです。会場はそんな古い建物の1つで、もとは個人の邸宅だったような造り。大学のゲストハウスかクラブハウスとして使っているらしい。呼び鈴を押すと、見るからに育ちのいい学生がきちんとスーツにネクタイでお出迎え(もちろん扉にはがっちり鍵がかかっている)。何かのファンドレージングパーティーらしいのですが、アルバイトかボランティアか男女とりまぜて、学生がたくさんウエイターやらウエイトレスをしていました。みんな、いかにも良家の子女。ゲストは、これも典型的な東部のお金持ち、お家柄のよさそうな年配のカップルがほどんど。
別に大学内のツアーをしたわけではありませんが、アイビーリーグの大学の豊かさの底力を感じてしまいました。同じ学費を出すなら、アイビーリーグに入れたいと親が血眼になるはずです。ただ、コネティカット州の中でも貧困問題では1,2を争ニューへブンで、そこだけ豊かさを凝縮したような大学ってことには、ちょっとひきますが。

通じない

落ち着いたと思ったのも束の間。なんだか、次から次へとバタバタと仕事や用事が目白押しで、なんだか疲れます。こう忙しいと、子供もほったらかしになるわけです。わたしはかなり口うるさいタイプの母親だと思いますが、仕事に気をとられていると、はっと気付くともう外は真っ暗。娘はぼうっとテレビなんか見てるか、見張られないのをいいことにIM(
インスタントメッセージ)のやり放題だ。娘が幼い頃から、がみがみと口うるさいわたしを見て「言うからやらなくなる」という人もいましたが、ところがどっこい言わなきゃなああんにもやらないんです、うちの娘は。
で、仕事しながら外が暗いのに気付いたわたしが「大変大変、ごはんつくんなきゃ」と思って、バタバタとキッチンに行くと、娘がぼうっと、くっだらないティーンエイジャードラマを見ている。「ちょっと宿題はやったの?」「やった(明日提出のものだけはやったという意味)」「プロジェクト(長期間の宿題)も?」「月曜までだから今日やらなくてもいい」(毎日やんなきゃ間に合わないだろうが)「日本語の宿題は?」「やりたくない」「やりたくなくたってやりなさい」「ごはんの後で」(どうして何でも先に延ばす?)
ああ、そうだ洗濯物も乾燥機にいれなきゃと、洗濯機のあるベースメントに降りていくと、娘の教科書やら本やら雑誌やらが散乱している。その上、ガムの包み紙、のみかけのペットボトルも放置。「次のこと始める前に、それまで使ってたものは片付けなさいって百万回言ってるでしょ、どうして散らかしっぱなしにするのっ!片付けなさいっ」と怒鳴る。「ちょっと待って」「待ってじゃないっ!すぐやれっ」仏頂面でタラタラ片付ける娘。
夕飯の支度をしていて、ふと気付くと、娘がリビングルームから消えている。案のじょう、ベースメントからはキーボードを打っている音がする。宿題やってるはずの娘がIMに熱中しているのは明白。わたしが階段を降りてくるのに気付いた娘は、あわててモニターを消す(バレバレなんだよ)。母は切れる。
「お母さんは息する暇もないくらい忙しいのに、なんでお前の見張りまでしなきゃならないのっ!お前にはセルフ・ディスシプリンというものがないのかあっ!それに、なに、このガムの包み紙はっ。さっき片付けろってって言ったでしょっ(どうしてこう次から次へと腹立てるネタが転がってるかな)」
「本とかは片付けろって言ったけど、これは言ってなかった」
「見りゃわかるだろうがああああ。言われなきゃやらないヤツなんて何の役にも立たないんだよ。そういうのを日本じゃ『金槌女房』っていうんだからね(言いながら、こんなこと言ったって今時、日本の子供にも通じねえよと思う)。金槌って言われて釘もってこないのが気がきかないっていうくらいなのに、お前のはそれどころじゃないだろうがあ」金槌も釘も女房も娘の日本語のボキャブラリーにはないので、絶対に通じてない。
「セルフ・ディスシプリンのないヤツと気のきかないヤツくらい使えないもんはないんだよっ。そんなヤツはいつになったってミニマム・ウエジ(法定最低賃金)しかもらえないんだからねっ」これは通じました。が、
「I’m eleven years old. I don’t care the minimum wage (あたしはまだ11歳なんだからね。最低賃金なんて知ったこっちゃない)」と抜かしやがりました。
もう少し大きいティーエイジャーの娘を持つ友人が言っていました。ティーンエイジャー(のわが子)を見てると、こいつらだんだん脳みそが抜けていってるような気がする。20歳くらいになると、また抜けた脳みそが少しずつ戻ってくるらしいよ、と。うちはこれからが脳みその抜け時なわけです。疲れ倍増。

あっというまに9月もなかば

8月末から仕事がこれまでになく立て込んでブログも更新しないまま過ぎてしまいました。やっとひと段落です。
2週間前に書いたCNNの「広島」発言は、翌日のニューヨークタイムズの1面に、ルイジアナ州知事の発言として掲載されていました。まあCNNのせいではないにせよ、ニューヨークタイムズにせよテレビ局にせよ、誰も「まずいな」と思わなかったんだろうか。なにしろ事態が事態だけにこういう失言で知事が叩かれるということはなかろうけど、それにしてもです。日頃、日本の政治家の発言の無神経さというか政治的配慮のなさに、ばっかじゃないの、と思っていたけれど、人種だの男女差別だのにはやたらと気をつかうアメリカの政治家も戦争関連となるとこうも鈍感なものかというのは、ちょっとした驚きでした。まあ、その程度の政治家だから、ハリケーンでも役に立たなかったんだろうけど。
今年は例年になくいつまでも暑いです。湿気はないから爽やかですが。
この2週間、おきてるときはほとんどコンピュータに向かって、夕方になるとコンドのエクササイズルームでステアマスター踏んで、ご飯作って、またコンピュータの前という生活を繰り返していたので、世の中から隔絶された感じです。マンハッタンや東京と違って、1歩外に出れば人がいて店があってということがないので、車に乗ってどこかにでかけないと、本当に外界と触れ合わずに過ごすことになります。子供がいるから外との最低限の接触はあるわけですが、これで子供がいなかったら本当に精神衛生に良くない仕事環境です。もっとも子供がいなかったら、なにもアメリカの郊外になんか住んでないわけですが。