Wicked

ものすごく久しぶりにブロードウエイのミュージカルを観てきました。「ウィケッド」。オズの魔法使い外伝みたいな話です。ニューヨークに来たばかりの頃、って15年以上も前ですが、マンハッタンに住んでいたこともあって、せっせとミュージカルだのバレエだのを観ていました。で、最初こそ本場のミュージカルってことで、かなり気負って観ていたのですが、ブロードウエイ・ミュージカルは「感心はするけど感動しない」という結論を出して、ここ10年ほど日本から母が来たときにお付き合いする程度になっていました。
が、ウィケッドは娘が珍しく、というか初めて観たいといったので、それならば、ということで気合を入れてチケットを入手したわけです。ブロードウエイ・ミュージカルにケチをつけていても、わたしは基本的に芝居やダンスは大好きで、趣味の全く合わない娘と珍しく一緒に楽しめるかも、というのが嬉しかったのです。かつて「くるみ割り人形」に連れて行ったら、幕が開いて3分で「帰ろう」と言った娘が、なぜ突然ミュージカルを観たいと言い出したかというと、友達がみんな観てるから。うちの娘までが観たいというくらいですから、「ウィケッド」はかなりの人気ミュージカルで、2ヶ月前にチケットを取ろうとしたときに既に週末は10月まで完売。それで火曜日のオーケストラの隅っこをやっと確保しました。
で、どうだったかというと、すごく面白かった。生の舞台を観るのは本当に久しぶりだったので、幕が開いた瞬間から、ああ、やっぱり舞台はいいなあと、それだけで感動してしまいました。ほとんど上手端の席でしたが、前から4列目ではあったので、迫力もあったし。舞台はやっぱりかぶりつきにかぎります。主役の緑の魔女をやってる女優がすごくいい。舞台となっているのは、オズの魔法使いの住むオズで、話としては、女の友情の物語。アメリカらしいヒューマニズムの溢れる話です。人気のあるブロードウエイ・ミュージカルは、まず何を観ても、ほぼ100%感心することができます。役者の技術から衣裳、装置にいたるまで、さすがトッププロのお仕事です。ウィケッドも本当にすごい。歌もダンスもうまいし、装置も衣裳も豪華だし。で、感動したかというと、結構感動しました、これが。結末がちょっとチンケなんですが、前半はことに素晴らしかったです。主役の魔女二人がほんとに面白い。popularであることというのが、一つのテーマになっていて、この芝居がティーンエイジャーに受けるのがよくわかります。being popular というのはティーンエイジャーのオブセッションですから。二人の魔女と三角関係になる王子様みたいなのが出てくるのですが、このイケメン王子様は徹底して「君に付いて行こう」というタイプです。キャリアや正義を目指して闘う魔女二人の人生の中では、この王子様、結構どうでもいい存在だったりして、なかなかニューヨーク的な話です。
言いだしっぺの娘も、予想以上にはまりまして、高いチケット奮発しただけのことはありました。次は「マンマ・ミーア」が観たいそうです(これも「みんなが観てる」)。ブロードウエイのミュージカルというのは、なまじロングランをしているだけに、いつでもいいやと思ってるうちに旬を過ぎてしまうことが多いので、これから、娘をダシにたまに観に来ようと思います。

プール

また蒸し暑くなりました。今年のニューヨークの夏は暑い。
学校が夏休みになって、コンドに住む子供らは、みんな1日中プールにいます。そして、そのまま、夜は誰かの家に遊びに行ったり、泊まりにいったりしてしまう。親のこともよく知っている同じコンド内のことだから、安心といえば安心だけど、なんだかもう、子供らはタガが外れたようなはしゃぎぶりです。それもこれも、娘の学年は、今年からプールに親の監督なしで入れてもらえる年齢になったから。日本じゃ、町のプールくらい小学校の3,4年生にもなれば友達どうしで勝手に遊びに行きますが、アメリカのプールはそういうことにうるさい。だから、親の監督が必要な年齢では、1日中プールにいるってわけにはいかなかったのです。子供は暇ですが、大人は一日中プールに寝そべってるわけにはいきませんから。で、晴れて一日中プールで過ごすことのできるようになった子供たちはうれしくてしかたがない。朝からプールサイドに腰を据えて、まるでプールの主状態。
アメリカの郊外にはプールのある家も珍しくありませんが、家になくても、大抵はコミュニティ・プールがあったり、近くの湖(やたらと多い)にビーチがあったりします。ちなみに学校にはプールはありません。だから、子供たちは学校で水泳を習うということはありませんが、こういうコミュニティプールやビーチが夏の遊び場に決まってるので、泳げない子供というのはまず見かけません。都心は別ですが。
で、そういうプールやビーチには小さい子供を連れたお母さんや、孫の子守をしているおばあちゃんもいますが、朝からご出勤で主のような顔をしているのは、大抵がうちの娘くらいのローティーンの子供たちです。1,2年で飽きて、炎天下、1日プールにいるなんて実はたいしてクールなことじゃない、と気付くらしく、ハイスクールくらいになると、あまり姿を見なくなります。
夏休みは始まったばかりなのに、娘はもう真っ黒。日焼け止めはつけさせていますが、子供らは陽射しに気をつけるなんてことはしないので焼け石に水です。お肌にはよくありませんが、プールで大威張りの子供たちは、まことに楽しそうで、まあいいか、と思ってしまいます。

みんないいって言った。

毎年のことですが、夏休みに入る前はすごく忙しい。子供の学校のスケジュールはイレギュラーになるし、イベントは多いし、日本に帰る休暇に向けて仕事は前倒しになるし。あっという間にスクールイヤーも終わりで、今日は学校は学年末のフィールドデー。1日、タウンパークのプールで遊んで来る日です。いつもと同じ時間にスクールバスで帰ってくるはずなのに、やけに遅いと思ったら、電話がかかってきて、プールに直行するといいます(コンドの共同プールがスクールバスの停留所のまん前にある)。電話をかけているのは、プールの前に住んでいる友達の家から。そのまま、夕方になっても帰ってこないので、様子を見に行ったら、同じ学年の女の子たちがワラワラとたくさんいます。どうも、みんなでスクールバスからプールに直行したもよう。何をどう言いつくろってスクールバスからおろしてもらったのか、家が近くじゃない子もいます。

「いったい何やってるの」と聞くと「今日はスリープオーバー(お泊り)するんだ」といいます。「どこで?」ときくと、聞いたことのない友達の名前をあげました。どうやらそこにワラワラいる子供の一人らしいのですが、これまで娘の話にも1回も出てきたことのない子です。いくら同じ学校の子とはいえ、名前も聞いたことなければ、どんな親かも知らないところにいきなりお泊りにやるっていうのも心配です。娘は「みんな行くんだ」といいます。ちょうどそこに「みんな」の中の一人のお母さんがいたので、「どうする」と聞いてみると、そのお母さんも「遊びに行くだけならともかく、泊まりはちょっと。夜に迎えに行く」と言います。じゃあ、他のお母さんたちにも聞いてみて決めましょう、ということで家に戻ってきました。

で、2時間後、娘から「今、プールの前に住んでる友達の家にいて、これから××のお母さんが迎えに来てみんなで泊まりに行く」と電話がかかってきました。「ちょっと待ちなさい。知らない家で泊まらせるわけにはいかない」というと「みんな行くんだ、どのお母さんもいいって言った」と主張します。あわてて、娘がお邪魔している家に行って(同じコンド内)、その家のお母さんに話をきくと、そこの家の娘は昼間、お母さんの仕事先に電話してきて、「他の子のお母さんたちもみんないいって言ったから、泊まりに行ってもいいか」ときいたそうです。その時間には私はお泊り計画すら知らなかったのだから、大嘘です。で、さっき「行かせない」と言っていたお母さんの子供も行くといいます。「お母さんに聞いたの?」ときくと、ちゃんと了承を得たといいます。後で、電話で、そのお母さんに聞いたところ「みんないいって言われてるのに、うちだけなんで?」と言われて、行かせざるを得なかったといいました。わたしら大人は、みんなして、子供にしてやられたわけです。親も「みんな」というのに実は弱いということを彼らはよく知っています。それにしても、行く方はともかく、いきなり5,6人もの友達が泊まりに来ると言われて、あっさりOKする親はすごい。

この2ヶ月くらいすごく慌しかったせいか、胃の調子が悪くて、医者でprevacid(胃酸抑制剤)の処方箋をもらいました。去年も飲んでいたものです。が、薬局に行ったら、その薬が保険屋から拒否されちゃったからと、全額請求がきました。去年はちゃんとカバーされたのに、というと保険屋に電話して確かめてみないと、うちじゃ理由はわからないといわれました。そりゃそうです。去年、カバーされてた時だって30錠で50ドルという馬鹿高い薬だったのに、全額請求となると、30錠で170ドル! 買えるかっ、そんなもん。で、とりあえず、そのまま買わずに、保険屋に確認の電話をかけました。

保険屋のカスタマーサービスをたらい回しにされた挙句に、「prevacidは5月1日をもってわが社の保険ではカバーされなくなりました」という結論。カバーされて、かわりになる薬を教えてというと、aciphex, protonix, nexiumという3種類の処方薬名を教えてくれました。この薬の名前っていうのが、いちいちスペルを言ってもらってメモしないとわからないので、めんどくさい。その上、その薬はprivacidとどこが同じで、どこが違うの?と聞くと、「僕はそういうことに答えるポジションではないから、ドクターに聞いてね」と。で、その代替薬の処方箋を書いてもらうべく医者に電話するとナースの留守電にまわされて、返事は多分明日だそうで。ああもう、ほんとに。

アメリカには国民保険も社会保険もなくて、健康保険は生命保険や損害保険と同じように保険会社各社から出ている商品を各自が買うシステムです。一般商品ですから、年収スライド制なんかじゃありません。月々の支払いが500ドルの商品はドナルド・トランプが買っても、ホームレスのおじさんが買っても同じ月々500ドル。カバー率その他の条件は掛け金が高いほど良い、というまことにわかりやすいと言えばわかりやすいことになっています。が、掛け金は日本じゃ考えられないくらい高い。その上、こういうカバーするのしないの、という手続きの煩雑さといったら、もう。日本じゃ当たり前と思っていましたが、国民健康保険がどんなに有難いものだったか、アメリカに暮らすと、ようくわかります。わかりすぎです。

寒いじゃないかあ

昨日(火曜日)はまたまた暑くて、昼間は34度くらいになって、湿気も東京に負けないくらいでした。その熱波の中、師匠のおともでお琴を弾きに行きました。うちとマンハッタンの中間くらいにあるオフィス街の図書館のフリーコンサート。場所は道。スカルプチャー・ガーデンと名前がついているらしいんですが、ビルの横のちょっと広めの歩道。まわりはビル。広い3車線道路に囲まれて車がブンブン走ってます。当然アスファルトに真昼の陽射しがガンガンあたりまして、くらくらするような暑さ。ここ1週間異常に暑かったので、浴衣で許してもらいましょう、ということになったのですが、浴衣だって暑い。例年なら爽やかな天気の時期なので、こういう野外コンサートがスケジュールされてるわけですが、こんな炎天下じゃ立ち止まろうとする人だってそうはいません。だいいち暑さのあまり人がほとんど歩いてない。その上、主催者の段取りが唖然とするくらい悪くて、師匠は切れる寸前。なにしろ路上なので、走る車やら何やらの風にあおられて楽譜のページはめくれまくり、それをおさえようとして、間違えまくるわたし。とうとう師匠の楽譜が譜面台からすっとんだ。それを、主催者が拾ってくれた。と、思ったら譜面台に載せずに遠いところに片付けてしまいました。コンサートの企画やってながら楽譜は必要だから譜面台に乗ってるんだってことがわからないのかあ。それでもさすがに師匠は動じずに弾き続けます。基本的に師匠から暗譜を要求されることはありませんが、やっぱり暗譜に近いくらいに練習しとかないとまずい、ということがよくわかりました。こういうことがあるから。で、その後、今度は私の琴の柱が飛びました。低音をとっている一の柱では時々あることなんですが、それを拾った主催者は、また私と目も合わさずに片付けようとするじゃないですか。「それはこっちにちょうだい」と必死で小声で叫んで奪還。せめて、どうするか目線でたずねるくらいのことはしてください。

で、一夜開けて水曜日。涼しい風が吹いて、空はどんより。気温は真昼間も17度くらい。肌寒い。でもって夜は摂氏10度まで下がるそうで。夕方には寒くて窓を閉めました。今週いっぱい涼しいそうです。

明日から1週間娘は究極の短縮授業。9時50分下校。って行く意味あるのか。これから1週間、学年末試験が毎日1科目ずつあるそうです。まとめてやって早く夏休みにしてくれれば、日本に早く帰れるのに。

水が出ない

さらに暑い。今日もまた90度(摂氏だと32度)。ずうっと夜も70度以上だから摂氏25度近いわけで、このあたりじゃ7月8月の真夏でも珍しい暑さです。暑くて寝苦しい夜なんて例年ならそうそうあるもんじゃありません。少なくとも去年は一回もなかった。それがこの4,5日ずっとです。

仕事の締め切りが重なっていたので、おきぬけからずっとコンピュータに向かったいたら、お隣さんがたずねてきて、「お宅は水出てる?」ときかれました。キッチンの蛇口をひねってみたらチョロチョロとしか出ない。断水のお知らせなんか来てないし、きっと何かでちょっと水道栓締めただけだよね、と暢気に言い合っていました。で、今午後4時。水はまったく出ません。この暑さの中、水がないのは辛い。手がベタベタ、顔がベタベタ。娘が帰ってきても手も洗えない。管理会社に電話しても、「今なおしてるところ」の一点ばりで、「いつなおりそうなの?」ときくと「もうすぐ」だそうですが、「もうすぐ」っていつだ。

まあ、ともかく今回は、いつかの電話やケーブルみたいにうちだけじゃなくて、コンド全体がやられてるみたいなので、ちょっと気が楽。って問題はそれだけ大きいってことだけど。アメリカの郊外は基本的に井戸です。一軒屋は各家で井戸を掘ってるケースが多いですが、コンドの場合は協同井戸。先月から1軒当たり1200ドルという高額の水道修繕費用の分割徴収が始まったばかりだっていうのに、断水。ポンプが作動してないそうで「今、水をデリバーしてる」と言っていたのが、いやあな予感。水をデリバーしてるってことはポンプはなおらないのか。

カーニバル

ほんっとに暑い。さすがに昨日(水曜)は今年初めて冷房いれました。

夏になると、アメリカの郊外には、カーニバル(移動式遊園地)が来ます。たいてい町の消防団のファンドレージングを兼ねているので、場所は消防署のバックヤードです。バックヤードといってもアメリカの田舎の消防署はたいてい広いヤードをもっていて、浅草花屋敷の敷地の2,3倍はある。だから、結構大掛かりな乗り物が余裕で入るわけです。学生の頃読んだ、ブラッドベリの「黒いカーニバル」に出てくるカーニバルっていうのはこういうものだったんだな、と引越してきて初めてわかりました。普段はなんにもない空き地に、突然、電飾きらめく遊園地が出現して1週間でまた跡形もなく消えてしまうわけです。それはもう、郊外の子供たちにとっては夢のようなものであろうということがよくわかります。

最初のうちこそカーニバルが来ると物珍しくて出かけたものですが、パーキングの混雑がめんどくさいので、ここ数年はなるべく避けるようになっていました。なるべく避けるっていうのは、なるべく子供に知られないようにするっていうことです。が、ミドルスクールに行くようになった今年から、娘は友達と行くと言い出しました。しかも隣町にいつ来るとかいう親も知らないカーニバル情報もゲットしています。友達と行くといったって、ドライブするのは母親ですが、近隣の町のカーニバルのはしごをするというのがティーンエイジャーのお約束らしい。約束して一緒に行く友達は2,3人ですが、カーニバルには同じ学校の子供たちが大勢来ていて、それは楽しくて仕方ないようです。

で、木曜日。「今日はブレスレットナイトだから行かなきゃ」と勝手に決めて、往復のカープールするお友達も調達してきました。ブレスレットナイトというのは乗り物乗り放題のブレスレットが販売される日。つまり長時間ねばる子供たちにはおトクな日ということです。カーニバルの特別支給お小遣いは大盤振る舞いの20ドル。乗り物ブレスレットの他にもリンゴ飴とかゲームとか欠かせないものがあるそうで、さらに自分の全財産10ドルも持っていきました(娘は宵越しの金は持たないタイプ)。持っていくといったって、子供らはバッグなんて持ちません。ショーツは例のSoffeなのでポケットはついてません。どうやって持ってくの?というとスニーカーの中に入れるといいます。お札の1,2枚ならともかくコインのお釣りでももらったらゴロゴロして歩きにくかろうと思うのですが、いいんだそうです。わたしは送りのドライブ担当でしたが、お迎え担当のお母さんは子供に携帯を持たせていました。その子もショーツはポケットなしのSoffeですが、ウエストゴムを折り返したところに携帯を巻き込んでいました。なんとしてでもバッグは持ちたくないらしい。

夜までたっぷり遊んで帰ってきた娘によると、今日のカーニバルはすごく混んでたそうです。乗り物の一番前に乗るために脇によけて待っていたら、後ろにいた小さな子供を連れたお母さんに「割り込みするんじゃない」と言われて、30分以上も待ってたのに係員にまた後ろに並ばされたとブーブー言っていました。濡れ衣を着せられた娘たちはかわいそうではありますが、まだ小さかった娘を連れてカーニバルに行っていた頃、徒党を組んではしゃぎまわっているローティーンの子供たちが傍若無人に見えたのを思い出しました。自分の娘はああはなるまいと思っていたんですが、いつのまにかなってました。